Nicotto Town


日記ダイアリー徒然草


卒業

桜って、好きだ。
桃色の花びらが、ひらひらと舞い降りる。
そんな光景を想像しただけで、心が温まる気がした。
現実逃避?違うはずだ、多分。
三月。まだ肌寒い季節。
半袖はさすがにきついということに気づく。
世界中の人みんなが半袖になったら、春が早くくるんじゃないか?
ぼーっと畳の上にねっころがったまま、カレンダーを見る。
春休みまであと、四角が五つ分。
五日間って意外と長いんだ。
私立中学の入試に落ちてから、私の毎日は変わった気がする。
なんとなく、だけど。
私は一体、何のために勉強をしていたのだろうか?
自問自答を繰り返すうちに、わけが分からなくなってくる。
結果ゆえの経過?経過ゆえの結果?
そんなのどうでもいいことなのだろうか?

私の部屋は、本でいっぱいだ。
参考書は、中学を落ちたときに全部捨てた。
本棚からこぼれ落ちたものも、そのまま放置。
空き巣か何かが入ったときのように、すっごくカオス。
ずっと和室で寝転んでるのも、そんな部屋も見たくないからでもある。
あーあ。
そういうと、私の未来は少しだけ救われる。
残念な状況だって、わかってますよ。
最悪なパターンだって分かってますよ。
人が分かってることをわざわざ言う人間って、一体何なのだろうか。
試験の結果発表が終わった日。
親友の加奈は、落ちたことを知ると、私にこういった。
「由紀はがんばったよ!!みんなと同じ中学でもきっと楽しいよ!だから、元気出して?楽しく過ごそうよ」
そんなこと、あんたに言われたくないっつーの。
分かってる、落ち込んでなんかない。
ただ少し、少しだけ分からなくなってるの。
思わず、「そんなこと加奈に言われたくない」って怒鳴ってから、一言もしゃべらないまま。
学校でも、わざと避けているように、加奈は居なくなる。
べつにいいもん。
強がりなんかじゃないことを祈る。

ちょっと外に出てみようかな。
そんな風に思い、私はサンダルをはく。
家の中でも寒いのに、外はもっと寒い。
上着を着てこなかったことを後悔したけど、取りに行くつもりはなかった。
「家出したいな……」
ふと思う。
もし私が、全部捨てて、旅に出れたなら。
どれほど、私は幸せになれるだろうか?
今のままだろうか。すごく幸せなのだろうか。
それとも……。
私は自分が卒業文集になんて書いたのか忘れてしまった。
私は不幸な子ですかね。
なぞは深まる。
久しぶりに見た空は、寒い風をあらわすように、真っ青だった。
雲のない青い海は、美しさより怖さを感じた。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.