Nicotto Town



仮想劇場『親愛なるハニービーンズ』



 長い長い雨が止んで僕の町にも晴れ間が見えた。
 濡れたシャツを窓辺に干しながら遠い空をじっと眺め、考えることは大切な貴女の事。

 笑うことは考えるよりもずっと簡単。切なさに身を任せることもやはり簡単。
 自分らしく素直に生きることに比べれば存外に簡単だ。

 今夜も冷えた体をバスタブに沈めながら思うことはやはり変わらない。
 湯面の下で寂しく揺れる膝小僧の色と天井までの長い長い距離。そこに現れる君の確かな幻影。
 タイル床の上で架空のシャンプーが泡立ち、やがて僕の指の間をクセの強い髪が滑りながら熱い涙に安堵する。

 ランプの木漏れ陽が揺れている。
 そして窓の向こう側は今も変わらず静寂の海だ。
 同じ感傷の中で思い描いた理想形のまま、何一つ欠けることなく僕をここに安置している。

 君がひとつ歳を重ねるとき、僕もまた皮一枚ぶんだけ成長するだろう。
 そして変わらぬ歩調で今後も歩み、振り返らずとも言葉を綴るに違いない。

 君がそこに在るように、僕もまたここに在り続ける。
 同じ時代に産まれてきたことに感謝しながらね。

    Dear Ms.honey beans.


 






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