Nicotto Town


あなたに会えてよかった♪


【第15話】黄昏のソロキャン


「だからあ あっち行けって言ってるじゃないか」

「いえ、なんだか耳が遠くなっちゃったのかな…先輩が何言ってるかわかりませんっ」
「私も耳が遠くなったみたい… だから遠慮せずに、思う存分お話しくださいな」
「しずかさんまでですかっ」
着信するスマホを沙也加から受け取り、ふと顔上げると2人とも超至近距離でまで寄ってきてて、目をランランと輝かせてさ…

着信画面を見ると、やっぱりっていうか、ちょっと驚いたっていうか…

神田さんだったんだよね。

「… もしもし…」
俺は通話ボタンをタップして、一瞬だけ間をおいて話し始めた。
沙也加は露骨に耳をこちらに向けてくる。

「もしもし 天塚クン?」
「あ…はい…」
「…」

電話の向こうの声は、静かなキャンプ場で、木々を渡る風でまばらに聞こえる枝の摺り合う音にすら消え入りそうなくらい小さくて。

しずかさん、もうちょっと離れてよ。
言いたくないけど、沙也加もだけど、君たちの鼻息まで相手に聞こえちゃうだろ?

「神田さん…」
「天塚クン…」

俺は、なんだか胸がいっぱいになってきて。そして彼女の名前を呼ぶことしかできなくなってきて。
ふとその時脳裏をよぎったのは、俺が神田さんと初めて出会った時のシチュエーションだった。

校内の禁止場所でバーベキューしてた学生たちに、腰に手を当ててやや前屈みになって、紅潮した頬のままで、やめなさいっと、諭していた神田さん。

ニコニコ笑いながら、俺と話をしてくれた神田さん。

俺ははっきり確信したんだ。

「……たく、ないです…」
「え…?聞こえなかった」

「ほら もっと大きな声で言いなよっ」
俺の耳元でしずかさんがそう囁く。沙也加はうんうんと頷いていつのが視界の隅に入ってくる。
でももう、俺はそんなことは気にならなくなっていてさ。

勇気を振り絞る場面って、人生にそう何回もあるわけじゃないだろ。
今なんだよな。今… そう思ってね。




「神田さんっ!俺神田さんとっ 
別れたくないですっ!
このままで終わりたくないですっ!!」



俺の声は思いもよらずかなり大きかったみたいで。
沙也加はびっくりしたように目を見開いて。口ぱくぱくさせて…
しずかさんはあっけにとられたように固まっちゃって…

「天塚クン… あんなの見られたあたしなのに、それでもいいの…?」

電話の向こうで、絞り出すような声で答えてくれた神田さん。

「いいですっ! 何があったかなんてもういいですっ!」

俺は夢中で言葉を繋いでいってたんだ。













「先輩、焼き鳥焼けましたよ?」
「天塚クン、とっておきのワインがあるの。飲むよね?」

もう、東の空が明るくなってきましたよ?
でもずっと君たちは傍にいてくれたんだねって思えばちょっとじんわりと涙が溢れてくる。

朝から酒に焼き鳥?
車運転できないじゃないですか…

「車なんてキャンプ場においてけばいーの!クマさんのタウンエースだったら、沙也加さん入れて3人乗っても余裕よ」
手際よくビンテージものらしい、しずかさん秘蔵のワインのコルクを抜く音が聞こえてさ。
そしたら焼き上がった焼き鳥を紙皿に乗せた沙也加までが

「そうですよ先輩!私も先週免許取ったから運転できますしっ!だから、たーんとおあがりっ!」
いや怖いでしょ…

「おはよー… おう!早起きだなっ」
クマさんがテントから起き出して、眠そうに目を擦りながら、ワイン注がれた俺を見て

「てか…まだ飲むんかいっ!!」

天使坂って、あの夜を除けばほんと、天気いいんだよね。少しひんやりした空気がゆっくり流れて、じわっと汗ばんだ身体を冷ましていってくれる。

神田さん…
あの夜、告白した俺の思いに応えてくれた神田さん。
素敵な思い出をいっぱいくれた神田さん…

でも、もう忘れなきゃいけないんだね。

昨夜、永遠に続くような沈黙のあと、電話の向こうで

「ごめんなさい…」

切れた。




焼きたての焼き鳥を頬張りながら、しずかさんのとっておきワインを飲んでたら、沙也加がふと、顔を上げて。
一瞬目を細めてこう言った。

「先輩、もう焼き鳥は終わりです」
「え?なんでさ?まだたくさん残ってるじゃねーか?焼いてくれよ!」
「いーえ!これで先輩をお世話するのは終わりなのですっ!」

「天塚クン。ワインも終わりだよ」
しずかさんも?
「そう 終わりなの。天塚クンをお世話するのもこれで終わりだよっ」
「ど、どうゆーことですかっ?」



すると、しずかさんは軽くウインクをして、俺の後ろを指さしたんだよ。
振り返って驚いた。


黄色のホンダN-VANが、俺の軽ハコバンの隣に急停車して


降りてきたんだ。そして、こっちに駆け寄ってきたんだ…

(終わり




















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2021/08/06 00:57
あまね猫さん

コメさんきゅです。
幸せ妄想いいと思いますよ^^
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2021/08/06 00:22
私は、人以上に 幸せ妄想していまして

夢ごこちが よい物を 集めている感じです!!

(≧∇≦)/ いつも、ありがとう。
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2021/07/31 21:09
理佐

コメさんきゅです!
しずかさんって意外に人気ありそうで…まぁキャラかぶりしてないからってのもあるけどね(笑)

次回作も楽しみにしといてください~
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2021/07/31 13:44
楽しかったです♡(⑉• •⑉)♡
おみやげに導火線持って来ましたw

この物語のしずかさん視点を独白的な要素で書いて欲しいと。
ふと思った☽*˖
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2021/07/24 00:01
いやもう、小言BBAですんません。仕上がりをイッキで読ませていただくのは、やっぱりスゴいワクワク感があって、読み始めたら止まらんです。次回作も楽しみです。

ほぉぉぉ、体験談なのねん?? リア充め、爆発してみるか?
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2021/07/23 21:36
ぽて先生

次回作は、ちょっと趣向を変えようかと思っています。
まあ煮詰めていきますので~

ん、でもプロの方にご指摘いただくのは本当に感謝です。
ありがとうございます!^^
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2021/07/23 21:34
ぽて先生!

様々アドバイスありがとうございます!
そうなんですよね…メインキャラ2人の書き込みは確かに足りないのは自覚してました(-_-;)
サブキャラ好きなんで、そっちに力が入っちゃったかも!

神田さんと天塚クンの絡みは、実際の体験談から引いてきたので(大幅改変あり)、ちょっと思い入れが大きすぎたかなと反省です。

出版物としてのターゲッティングも確かに甘いですね。
まあ最初からそんなに考えていなかったのもありますが、商業的に考えるなら確かにその通りです。
いちおー 青春群像+恋愛ものって感じで思ってたんですが、そのあたり「エッジ」効かせるほうがいいというのには目からうろこです…

形容詞に関しては、やはりまだまだダメダメですね。
頭に浮かんだイメージをそのまま書いてる段階から抜けきれないのかも。でもそういう細かいところを考えていくのが上達の道なんだなって思いました!
マンガ原作ってのは思いもよらない考え方でした。プロットを作り込んでいく…のを一度やってみます。

あーでも、3年前の作品を読み返したら、今回の作品よりももっと主人公の書き込みがしっかりしてた(それでも足りんがw)のが分かりました!

なんだかんだ書くのが好きなので、これからもお目汚しの作品を上げていくと思いますが、
ぽて先生、これからもいっぱい添削、編集者の目線でのアドバイスをお願いします!(≧▽≦)
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2021/07/23 19:08
次回作、そうだなぁ~。私は、天塚兄妹(特に妹の死)と、沙也加の話が読んでみたいな。大学生になった沙也加が、あえて積極的に天塚に声をかけ、「借りを返して」いるように見えるのはなぜなのか?
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2021/07/23 19:08
最終話まで読んで最初に頭に浮かんだ言葉をストレートに書くと
「天塚の妹、死んでる必要なくない?」ですwww。
それと「事件」のあと、落ち込んでいるんなら天塚はもうソロキャンプにしか行かないようになっている方がエンディングとしてキレイかなとも思った。そうなると最後は当事者2人で、もう少し深い心情まで描き込める気がします。

天塚、なんで別れたくないの? 神田は電話してくるくらいなら、なんでそもそも佐々木をキャンプに誘ったの?

で、ここからが「出版屋さん」的な目線です。
まず、この作品が書籍になって、書店に並ぶとしたら「棚」はどこを想定してる? 読者ターゲットは?
青春群像劇(「桐島、部活……」みたいなジャンルなのか、恋愛モノなら読者プロファイルはどうなのか、「三丁目の夕日」的な、恋愛はスパイスの人情モノなのか……、本屋さんがパッと見て棚に迷うようだと売れません。その前に出版社でバーコードが作れない。マーケティング的にジャンル・読者ターゲットの絞り込みは、もっとエッジが効いていた方がいい。プロとして書く場合は必ずソコを要求されると思います。

で、書き手として重箱の隅をつつくと、形容詞・形容動詞の選択にもう少し注意してみたたら良いかなと思います。

たとえば「スマホの画面に“ポツンと”……“画面いっぱいに広がった”」「遠慮がちにポツンとポップアップした」なのか、「有無を言わせぬ雰囲気で画面いっぱいに広がった」なのか、どっちかじゃない?

「ボーイッシュなダウン(ボーイッシュということなら、レディーズ仕立てなのは確定なので、メンズをそのまま着ているようなワークマン女子っぽさは出ない) 

「カレーにゆっくり……突き立てる」(←突き立てるなら「グサッ」と。ゆっくりなら「すくい上げる」とかか?)

「2人だけのソロキャンプ……」 そもそも2人ならソロじゃない。

↑こういう細かい矛盾点から修正していく感じですかね。私は文章を書くときは映像でイメージが出来て、それを「文字に変換していく」作業なので、そのあたりのワーディングではあまり迷いません。

自主トレとしては、たとえばマンガ原作を書くつもりで、一度プロットを起こしてみる(脚本化する)といいと思います。「カレーにゆっくりだったら、スプーンは突き立たない」とビジュアル化できる。イメージが立体的になりします。
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2021/07/22 20:59
ハチさんこんばんは!
まぁ、楽しんでいただけたのならよかったです!
また次回作書きますので、その際はよろしくです^^
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2021/07/22 15:25
天塚くん、勇気出したけど残念だったな、、と思っていたら~!
私の脳内では、エンドロールが始まってから、黄色いNバンがキキ~って急停車しましたよ。
楽しかった~!!ありがとう^^
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2021/07/21 22:36
こんばんはw
完結しましたー

エンディングは、当初の予定とはちょっとだけ違ったんですが、登場人物が主張し始めてね(笑)
これってあるあるなんですよ。

sanngoさん
コメサンキュです。
ソロキャン篇は一旦ここまでですが、気力が乗ってきたらまた書きますね^^

バジル・さん
コメサンキュです!
そのダジャレのセンスは、ある意味超人的かと思ったよー(笑)
リアのけーすけは、ヘタレなので好きな女子にはっきりと告れないよーな男です(-_-;)

きらゆきさん
コメサンキュです^^

ハッピーエンドで喜んでいただけて良かったですよ!新しいのはまた近々書きますが、見捨てないで読んでくださいね(≧▽≦)
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2021/07/21 21:04
けーすけさんお疲れさま☆とっても楽しく読みました。
天塚くんががんばって、え、でもだめだったの?って
がっかりして、でもハッピーエンドになって、よかったです!
ずっと楽しく読めたよ、ありがとう。また新しいの書いてくださいね♬
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2021/07/20 23:21
電話に出んわ~~^^かと、思ったけど・・・天塚クン、よくやった。パチパチパチパチ・・・

男は、好きなら好きと、ハッキリ言うのよ(⋈◍>◡<◍)。✧♡

リアのけーす毛さんも、ハッキリ大きな声で意思表示を~~~(´艸`*)
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2021/07/20 23:03
ハッピーな終わりでよかった~♪

まあ、これからも色々ありそうなのでまたソロキャンプの話気が向いたら是非とも~♪

けーすけさん面白かったよ(^^♪




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