世界最高齢記録更新
- カテゴリ:自作小説
- 2021/07/05 15:20:46
さなコンというコンテストに出してみた(一次通過しなかったので、転載開始)
日記にも自作小説のジャンル、久しぶりに投稿。
最初の 『朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。』
が決められている、というコンテストだったのです。ちょっと変わってるコンテストでした。
朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。
続けて「素晴らしいお知らせがあります。町本沙耶さんが、世界最高齢記録を突破しました。町本さんの記録があと七日更新されていくことを喜びましょう」
ニュースキャスターといっても、アンドロイドだけどね、と町本沙耶は独りで笑う。
町本沙耶は、そこでテレビのスイッチを消した。百四十二歳と六十四日、現存している世界最高齢記録を塗り替えた。
世界の終わりまであと七日。
「まさか、記録保持者になるとは思ってもいなかった」
沙耶は呟く。
十年前に世界の終わりが発表された時、世界じゅうがひっくり返って嘆く中、町本沙耶に大きな動揺はなかった。なにせすでに百三十二歳は高齢だったし、十年後はこの世にいるとは思えなかったからだ。
三年前、世界最高齢を更新していたジェームスさんが百四十二歳と六十三日で亡くなった時も、町本沙耶はその記録を打ち破る日を自分が迎えるとは思っていなかった。
しかし、世界が終わる七日前に、町本沙耶は世界最高齢を更新し、記録保持者になってしまった。あと七日で世界が終わるというこの期に及んで、だ。
あと一週間で、世界は終わる。町本沙耶は世界の終わりを生きて迎えそうであると考えて、やっぱりどこか信じられない想いが湧いてくる。打ち破られることのない世界最高齢記録保持者としてその日まで一週間、記録を更新していくのだ。
町本沙耶は、同じことをまた繰り返す。
「世界が終わる日を、記録保持者として生きて迎えるとはね」
町本沙耶はテレビから窓の外に視線を向けた。外は気持ちよく晴れて、とても静かだ。
世界の終わりまで一週間、皆、大切な人と静かに過ごしたいと願っている。
町本沙耶の、大切な人はもうこの世にはいない。たった独りで、世界最高齢記録更新を続けながら、その瞬間を迎えることになる。
町本沙耶は、からだの力を抜いて、ゆるゆると、静かに眠りについた。
(おわり)
読んでくれてありがとうございます。
世界が終わると発表された十年前、すでに町本沙耶さんには、親しい人いなかったのかも
ですね。
見送って生きていく――きっと簡単なことでないのだろうなぁ。
>この世の最後に大切な人と過ごし、静かに迎える世界なら終わるのは惜しい!
ほとんどの人がそう思いながら、受け入れるしかない一週間後を待っているとも、思います。
町本沙耶さんが寂しい人なのか?幸せな人なのか?
どっちなんだろう?
書いて気に入っている短編なので、読んで感想もらえて、すごく嬉しいです。
こちらこそ、ありがとうございます。
昔、ドラマか映画で
若返るのが良いか、普通に亡くなるのが良いか、選択を聞かれておばあちゃんが
「私は今までたくさんの人を見送ったわ、
これから若返って再び大事な人が亡くなるのを見送るのは嫌だから若返りたく無いの」
って言ったのを思いだしました。
この世の最後に大切な人と過ごし、静かに迎える世界なら終わるのは惜しい!
なんて思ったりしました。楽しかったです。
ありがとう。
読んでくれてありがとうございます!
世界が終わる直前で、誰も町本沙耶さんの記録に興味持ってないですよね。
町本沙耶さんも、どこか自分のことと思っていないような。
読んでくれた方がいろいろ、好きなように感じてもらえるのって、嬉しいです
印象深いです。
他人様にとっては多分、この人の存在は大きな問題ではなさそうです。
例え世界記録保持者になったところで。
なんていうか、そのギャップ(?)がおもしろかったです。
フルネームは、書いている時、自分もちょっとくどいかなと思ったのですが「彼女」にしちゃうのは
なんか、違うと感じました。
半年ほど後、また読み返すと「彼女」にしちゃいたくなるかも、とも思います。
この取得選択が、どういう判断にて自分の頭の中で実行されるのか、自分に説明つかない
のが、もどかしいです
投稿サイトにも感想いただいて、フルネームを繰り返す回数多いのでは? と感じる方もいました。感想ってほんと読む方、それぞれ感じるもので、面白いなぁと思います。
書いた側とは、感じ方違うということも多いです。
感想いただき、ほんとに感謝しています。
>アヴィさん
ピクシブというサイト上で行われた「小さなSFコンテンスト」というコンテストでした。
一万文字までのSF設定の短編募集していて。
最初の一行が、いかに独創的に展開するか?って感じです。
地球上の人間が滅びて、他の宇宙人がくる
地球の滅亡までを何度もループする など、やっぱり、よく練られている印象です。
自分のは締め切り間際に、ざざっと書いた感じだし、合計千文字いかないし。
でも、自分では割と気に入っています。
寿命がちょっと伸びた近未来設定が、まぁSFにひっかかると思うんです。
選ぶ人も、選ばれる人も、同じ人なんだぁ、と思うし、相性はあるかもです。
自分のは地味なんだと思います、全般的に。
アヴィさんの俳句選ばれたのは、おめでとうございますって思います!
続けるって大事なんだなぁと思う。
作品を読んで思ったのは、俳句って言葉を研ぎ澄ます感覚なんだなぁ、ってことでした。
テクニックうんぬんはわからないけれど、引き締まった世界だなぁと、改めて思いました。
物語は素晴らしく面白いです。二つの筋書きが絡み合って
魅力的。