仮想劇場『皆が何かしらのKYを背負って』
- カテゴリ:自作小説
- 2021/05/18 15:16:56
何とはなく場末の一角を占拠し
何とはない人々を眺める日々
得るものなんて何もないのに
それでも身を置いて今を省みる
目的を忘れた2羽のカラスは
往くあてのない片羽の番ガラス
空を飛べたのは上手く歩けないからで
決して神々によって優遇されたわけじゃない
欲しいものはいつだって空にあった
それでも空に捨てられるしかやりようがなかった
夜目が効かぬのに黒羽を授けられ
忌み嫌われながらも人々の視界を集める
闇の中でこそ生きやすかったのに
光の下では上手く隠れられない
恨むとすれば誰を恨む?
我らを産み落とした父母の情事か
我らを疎む常識かぶれの諸人か
所在をくれぬこの街のルールか
憤りで羽を毟り合い飛べなくなった2羽は
それでも互いの胸を重ねたままこの地に残った
地上に嫌われ空からも追放された番ガラス
街の黒点は今日も生きる理由を探す
決して期待しないのが2匹の約束事
そうやって場末の片隅にへばりついているのだ