【第10話】天使坂のソロキャン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/05/13 21:33:38
「初めまして…あたし、神田沙織っていいます。○○大学の2年生です。天塚クンを誘ってキャンプに来てるんですよね、今日」
にーっこり微笑んで俺の向かいのチェアから立ち上がり、軽く会釈して神田さんが挨拶。
「あ、じゃあ私と同じ大学で同じ年次じゃないですか?」
負けじと、俺の背後に進みながらしずかさんが神田さんと同じように微笑んで、尋ねてさ。
「桐谷しずかです。天塚クンとは以前一緒にキャンプしましたよ。彼の初めてのキャンプだったようですけど…」
すると神田さんはさらに微笑みを続けて
「あら、そうなんですね…でもその時はそちらにいらっしゃるクマさんもご一緒だったんでは?つまり3人でキャンプされたんですよね?」
「そうゆうことになりますね。天塚クンは私の造ったティラミスを、おいしいねってたくさん食べてくれましたよ?ねぇ 天塚クン?」
いや、この状況で俺は何を答えたらいいんだ?ってな感じで、俺は意味不明な笑顔見せるしかなかったよなあ…
へぇ、という表情を浮かべた神田さん。俺の方をちらっと見ては、それでも姿勢を崩さず
「デザートをご馳走されたんですね?いいですねー。羨ましいですよ」
ほう?という表情を浮かべたしずかさんに、一気に畳みかけるように
「あたしは今夜、天塚クンの造るカレーをご馳走になる予定です。きっとおいしいでしょうね」
「ぇ?天塚クンが料理するの?」
静香さんの鉄壁デフィエンスが一瞬綻びを見せた…その時だったよ。
「さあさあ、美女が2人もいることだしっ!俺の得意料理を振る舞うから準備手伝って!」
おそらくいい人なんだろう。女性2名もそのことはちゃんと分かった筈。
俺はおろおろしながら何も言えなかったしさ。クマさんって本当に空気読めないナイスガイだなって。
車が3台。そしてテントが4張。
クマさんのテントの前に張ったタープの下で、鼻歌混じりにおっさんが作り始めたのは、スキレットを使った玉ねぎと牛肉の炒め物。
「さあ できたから食べていいぞ!旨い筈だから安心しろっ!」
女子2名は、さっきまでの火花散らすトークバトルから一時撤退して、クマさんの料理を口に運ぶ。
「美味しい!クマさんってやっぱりキャンプの達人だね!」
しずかさんがポニテを揺らしながらコクコク頷いてそう言った。
「ほんと美味しいですよ!お肉も柔らかいし… どうやって作ったのですか?」
神田さんもさっきまでの剣呑な感じからほっこり抜けて、素直な感想を漏らす。
「だろ?肉は豪州の安い奴だけど、ステーキ用の肉をパイナップルに漬け込んで柔らかくしてあるんだ。塩は岩塩で、味付けは醤油とニンニク、それから…マル秘の調味料だぞっ!」
鼻をひくつかせながらクマさんがそう言った。
一瞬みんなが黙っちゃった。マル秘の調味料ってなんなんだろう?
「クマさん… マル秘の調味料って何なんですか?」
俺は素直に聞いてみた。
さっきまでの第二次世界大戦前夜のような緊張感から脱出させてくれたことを感謝しつつ、だ。
「それは…」
クマさんが口を開いた時だった。
「八角ですよね」
「んっ… 八角でしょう?」
神田さんとしずかさんが同時に答えたんだよ。
「むぅ… そ、そうだ!よく分かったな!」
クマさん、ご愁傷様です。
彼女たちって、ホント年季の入ったキャンパーなのだなって実感したのでね。
(続く
あとー女子2名は同じっぽいタイプだから
きっと、もーひとり違うタイプが登場するかもーって思って
勝手にワクワクしてるw
ナイスタイミングでしたね~!
それにしても、登場するお料理がどれも美味しそうだ~^^
今後の展開は、神田さんが大きなテントで来てるところが気になるなあ~
けーすけさんもお得意なんでしょうね・・
じゃなきゃこんな美味しそうな料理の場面書けないよね~
きっと、次回からは、神田さん、静香さんは、クマさんを、キャンプに同行だねぇ~~~(⌒▽⌒)アハハ!