1022番:アルト・ハイデルベルク
- カテゴリ:日記
- 2021/05/11 13:04:16
【81】
Rüder. Er wird di net auffresse.
Käthie. Letzt Nacht hab'i von ihm träumt.* Er ist die Stiege nauf
kommen mit einem goldenen Stern um den Hals, und groß hat
er ausgeschaut. Wie i nun das Gedicht hab sagen wollen, kann
i das erste Wort net finden. Vor Angst hab i anfangen zu beten.
» Jesus Maria, Josef, sagt's mir das erste Wort. «
Fr. Rüder. Und da —?
Fr. Dörffel. Und da —?
Käthie. Da bin i vor Schreck aufgewacht.
——訳——
リューダー:王子さまがお前を取って食べたりしないよ. ケティー :ゆうべ私はあのお方の夢を見たわ. あの方は襟もとに
金色の星をつけているの.そして階段を上がって行ったのよ.
背が高いお方にみえたわ.私は、さあ詩を述べようと思った
ときに、どうしても最初の言葉が出てこなかったの.
不安のあまり、私、お祈りをし始めたの.
「イエズス様、マリア様。ヨーゼフ様、初めの言葉を
どうか私に教えて下さい」ってね.
リューダー夫人:そしたら?
デルフェル夫人:そしたら?
ケティー :そしたら私、びっくりしたものだから、
そこで目が覚めちゃったわ.
《語彙》
di dich の南部なまりだと思います
net nicht の南部なまりだと思います
auffresse <auf/fressen (4格を) (動物が) 食べ尽くす
[俗] ~を(人が) 残らず食べる
die Stiege {_/_n} [南ドイツ] 階段
* Letzt Nacht hab'i von ihm träumt.
träumt. はgeträumt になるべきところですが、
これも南部方言なのかと思いますj.
. 独検準備中の方 träumen は規則動詞です.ご注意方よろしく.
träumen träumte geträumt
von im träumen ~の夢を見る
nauf hinauf の南部方言だと思います.
hinauf/kommen (i/s) 上って行く
der Stern {_s/_e} 星 (ここでは星の形の勲章だと思います)
der Hals {_es /¨e} 首、襟元、襟
ausgeschaut (過去分詞) <ausgeschauen ~ ~のように見える
groß (形) ①大きい、(背が)高い
②偉大な、立派な
①の意味も、②の意味も考えられるので
訳は2通りできます.
事実、岩波文庫版(番匠谷先生)では①
岩波文庫版(丸山先生)は②
旺文社版(植田先生)では②の意味で訳されて
おられます.
groß hat er ausgeschaut.
彼は背が高く見えました.
彼は立派に見えました.
どっちの意味に取るかは、この作品の著者に聞けば
いいのですが、1862年生まれのマイヤー・フェル
スターは1934年に没しています.
カール・ハインリヒの設定は皇太子なのだから
「立派」なのは当然だ.だから、「背が高い」で訳す
のがいい...
いやいや、襟に金色の勲章をつけているのだから
「立派」に見えるほうが自然だ ...
もう、どっちでもいいから、先に進みましょう~
あ、その前に、それはどこの国の勲章でしょうか?
ユットナー博士のときは、
「今にザクセン勲章ももらうだろうよ」
と言っていました.これはザクセン十字勲章ですが、
オーストリア出身のケティーの夢に出てきた勲章なら
マリアテレジア軍事勲章(これも十字勲章)の襟章
でしょうか? それともテキスト側には Orden という言葉
も Kreuzも出ていないので、襟の「金色の星」は勲章
ではなくStern (星)なので、単に軍隊の階級を表す星
(アクセス独和)だったかも知れません.王子の軍事階級なら
まだ下級将校だと思います.旧日本陸軍の下級将校は
星1つで少尉、2つで中尉. ケティーはeinem と言って
いるので、星は1つ、少尉さんなのかも知れません.
wie (従属接続詞) ~したとき(als)
nun ①今、今や、 ②さて、ところで
net nicht のオーストリア訛りと思います.
finden (他) 見つける
kann ich das erste Wort nicht finden.
どうしても最初の言葉が出てこない.
die Angst {_/¨e} 不安、恐れ、心配
vor Angst 不安のあまり、心配のあまり
vor が「~のあまり」という意味で使われる場合は
名詞は無冠詞になります.
beten (自/他) 祈る、(祈りの言葉⁴)を唱える
der Schreck {_(e)s/_e} 驚き、恐怖、驚愕
aufgewacht < auf/wachen (i/s) 目覚める