962番:アルト・ハイデルベルク(77)
- カテゴリ:日記
- 2021/04/10 11:13:21
【77】
Die Musikanten (stimmen die Instrumente).
Fr. Rüder. 's ischt bei kein andern Wirth in Heidelberg, daß sie
einen leibhaftigen Prinz fürs Semester zur Miethe bekomme.
Fr. Dörffel. Bei kein andern.
Rüder. Descht koi Frag*.——Wo ischt die Käthie ?
Fr. Rüder. Käthie !
Rüder. Sie soll helfa kommen. 's ischt alles drunter und drüber.
Fr. Rüder.(ruft). Käthie ! Sollscht helfa komma !
Rüder. Es müsse die Tische naus geschafft werde. 's ischt
nix geschafft !
Fr. Rüder.(ruft). Käthie !
——訳——
楽団員たち、楽器の音合わせをしている.
リューダー夫人:公子殿下さまご自身にお部屋をお貸しする
宿屋の主人は、ハイデルベルクで他にはありませ
んわよ.
デルフェル夫人:他にはありませんわね.
リューダー:それは今はどうでもいいよ、ケティはどこに
いる?
リューダー夫人:ケティ!
リューダー:ケティに手伝いに来させなくっちゃ.
もう全く、てんやわんやだ.
リューダー夫人:(叫ぶ)ケティ!来て手伝ってくれないと
だめよ.
リューダー:このテーブルは全部向こうへ出さないと.
. ああ、何も手つかずだ.
リューダー夫人:(叫ぶ)ケティ!
《語彙》
der Musikant {_en/_en}楽士、
stimmen [楽] 音を合わせる、(楽器を)調律する
leibhaftig (形)<述なし> 肉体をそなえた、
人間の姿をした、この世に現れた、化身の
権化の、 ② 実際の、本当の
Miethe < Miete → die Miete {_/_n ① 賃貸料}
② 賃貸借(契約)賃貸しと賃借りの両方の意味が
ある.したがって連用する動詞も
et⁴ zur Miete geben ~を賃貸しする
et⁴ zur Miete bekommen ~を賃貸しする
二通り生まれる
尚、bekommenが使われているのは
(賃貸契約を)「得る」という点に立脚している
ものと思います.
Es ist bei kein andern Wirt daß sie
einen Prinz zur Miete bekommen.
王子と賃貸契約するところは
他の宿主においてはありません.
* daß以下が実際の主語,
beiは「~のところで」(3格支配ですが方言のせいか
格語尾は脱落しています. なので私と同じ独検準備の方
は元の型、keinem andern Wirt, もしくは keinen andern
Wirten を想像してみましょう.)
*Descht koi Frag これも、南部のなまり言葉のようです.
おそらくDas ist keine Frage. / それは問題ではない.
の南部なまりかと思われます.訳出もそうしました.
drunter (南部、オーストリア) → darunter その下に
drüber (南部、オーストリア) → darüber その上に
's ischt alles drunter und drüber. →
Das ist alles darunter und darüber.
上に下にの大騒ぎだ.
↓
Es geht alles darunter und darüber.
大混乱に陥っている.
naus (南ドイツ)→hinnaus (こちらの内から)外へ
nix = nichts
geschafft (過去分詞)< schaffen (他) ①~を運ぶ
② (一定期限内に) 成し遂げる、やってのける
成就する
schaffen schaffte geschafft
③ 創造する
この動詞は ③「創造する」の意味の時は
schaffen schuf geschaffen
der Tisch {_(e)s/_e} 机、テーブル
≪ひとこと≫
きょうは(そしてもしかしたら、この先ずっと)方言
がぎっしりです.
私はこの地に行った経験がないので、間違っているかも
知れませんが、おそらく作者はこうした方言で、南部
の人間の陽気さを演出させようとしたものと思います.
この物語の書きおこしは、冷たい石の城の中でした.
第二幕は、明るい南部の陽気さにうって変わります.
それとええかげんな事を述べるついでに申し上げますと、
ゲルマン語系の言葉は、南へ行くほど、語尾が脱落退化
しているような気がします. 北へ行くほど、語尾保存が
しっかりしていて、アイスランド語などは、ゲルマン語
の語尾をしっかり残していると聞いたことがあります.
(よく知らないのに発言してすみません.)
よく知らないついでに、もうひとこと:
これを言語の冷凍保存の法則と言うのはいかがでしょう.