874番:アルト・ハイデルベルク(68)
- カテゴリ:日記
- 2021/02/10 13:58:33
【68】
Karl Heinrich. Doktor, kommen Sie mit, wir trinken ein
Glas Wein, Sie müssen auf andere Gedanken kommen,
lieber Doktor.
Doktor. Nein, nein ! Keinen Wein ! Keinen Alkohol.
Überhaupt,* was soll ein Mensch in Heidelberg, der keinen
Wein mehr trinken darf ? Der an Herzverfettung leidet.
Sie haben mich in diesem Schlosse zu Tode gemästet !
Essen und Trinken, das war die einzige Unterhaltung.
Nie Bewegung, ewig Aerger.* Acht Jahre, in denen man
sich nicht hat bewegen dürfen.
——訳——
カール
ハインリヒ:博士、一緒に来てください.私たち、ワインを
飲みましょう.
博士:いやいや、ワインはよそう.ほかの酒もやめて
おこう.そもそもハイデルベルクでワインをもはや
飲まないような人間は何たるものぞや.心脂肪を
患っているこの人間が(何の用事があるのだ?)
この城館でやつらは私に食べるだけ食べさせて
思い切り太らせてしまった.食べることと飲むこと
だけがささやかな楽しみだった.感動もなく、止む
ことのない怒りが続いてきた、8年間.そう8年間
感動は許されなかったのだよ.
《語彙・書法》
Gedanken<der Gedanke {_ns/_n} 考え
auf andere Gedanken kommen 考え直す
lieber (形) 愛する lieber Doktor 愛しの博士
日本語では大げさ過ぎるので、普通は訳しません.
die Herzverfettung {_s/複無} 心周囲脂肪沈着、心脂肪
zu Tode gemästet haben 死ぬほど太らせてしまう(現在完了)
der Tod [トート]{_es/_e} zu Tode 死ぬほど、こっぴどく
gemästet<mästen (他)(家畜を)肥育する、太らせる
[口語](4格に)たくさん食べさせる 食べさせて(太らせる)
die Unterhaltung {_/en} ① (楽しい)会話
(複無し) ② 楽しみ
die Bewegung {_/_en} ① 動き、運動. ② 感動、興奮
ewig (形) ①永久の ②(述なし)絶え間ない、不断の
(副)永久に、不断に、非常に永い
bewegen ①動かす ①心を動かす
ここでは①②どちらにも解釈でき、①なら
「この8年間、運動もせず・・」、 ②なら
「この8年間、感動もなく・・」
ちなみに、旺文社文庫では ①の意味で訳されています.
私はÄrger(怒り)と対と考え「感動」としてみました.
Überhaupt,* 原文は Ueberhaupt おそらくウムラウトの
代用入力がされているのだろう.代用入力とは
ä = ae ö = oe ü = ue ß= ss
のことで何らかの都合でウムラウト記号を打たない
場合やßを避ける場合に使われる.
意味は(副)「そもそも」、「一般に」
Ärger * 同じく原文側は Aerger. 同じく何らかの理由
(大文字の上のウムラウトを避けたかったなど)で
代用書きされたもの.
意味は(m){_s/複無}「怒り」、「立腹」
* 尚、ドイツ正書法では、大文字のウムラウトは
打たなくてもいいことになっている.