848番: スガンさんの山羊
- カテゴリ:日記
- 2021/01/28 18:15:18
【9】
Ah ! Gringoire, qu'elle *¹ était jolie la petite chèvre de
M. Seguin ! qu'elle était jolie avec ses yeux doux, sa barbiche
de sous-officier,*² ses sabots noirs et luisants, ses cornes zébrées
et ses longs poils blancs qui lui faisaient une houppelande !
——訳——
ああ!グランゴアール君、スガンさんのこの小さな山羊は
何と美しかったことか! やさしい目をしていたし、顎髭は
は下士官のようで、蹄は黒く光沢があり、そして縞模様の角.
また、高級外套風の白い長い毛並みの何と美しかったことか.
《語句等》
*¹ qu'elle:que + elle、このque は疑問代名詞ではなく、
副詞で.意味は「なんと、どんなに」
barbiche (f) 山羊ひげ、(小さな尖った)あごひげ
*² sa barbiche de sous-officie ここも、次の ses sabots noirs et
luisants もその次のフレーズも、すべて、頭に、avec が省略
されているので、読み手側で補う.(書き手は冗長を避ける)
qu'elle était jolie avec sa barbiche de sous-officie
qu'elle était jolie avec ses sabots noirs et luisants
qu'elle était jolie avec ses cornes zébrées
avec は美しいことの説明をしています.
~で美しいんだよ、~も美しい、~も~も何と美しかった
ことか!
日本語訳の方も、やさしい目をしていて(美しかったし)
顎髭は下士官のようで(美しかったし) 蹄は漆黒で(美し
かった)と本来はそういうことになるが、こちら側も稚拙な
文章になるのを避けたいので省略した.
sabot (m) 蹄(ひづめ)
luisant(e) (形) 光る、輝、光沢のあるく
corne (f) 角(つの)
zébré(e) (形)[ゼブレ] 縞のある、縞の
poil (m)(動物の)毛
houppelande (f)(服飾) ウプランド
◆ 14、5世紀の袖の長いゆったりした外套
faisaient une houppelande ウプランドにみえる
faisaient < faire ~に見える、~の様子をしている
(の)形を呈する
【10】
C'était presque aussi charmamt que le cabri d'Esméralda,*¹
tu te rappelles, Gringoire ? ——et puis, docile, cares-
sante, se laissant traire sans bouger, sans mettre son
pied dans l'écuelle. Un amour de * :petite chèvre ...
——訳——
(その美しかったこと)それはエスメラルダの子山羊
と同じぐらい魅力にあふれていたのだ.覚えている
だろう、グランゴアール君.——さらに、従順で
やさしくて、じっと動かずに、足を丼鉢に突っ込ん
だりせず、乳を搾らせてくれる山羊だった.
とてもきれいな山羊だったのだよ.
《語句等》
charmamt(e)[シャルマン](形)かわいい、感じがいい、
すてきな, 英語のチャーミング(charming)に相当
caressant(e)(形)やさしい、情愛深い
< caresser (他)やさしく撫でる、愛撫する
et puis ①[列挙] ~と、そして
② その上、おまけに
docile (形) 素直な、従順な
traire (他) 乳を搾る
écuelle[エキュエル](f) 椀、どんぶり鉢
un amour de + 無冠詞名詞 とてもきれいな
C'est un amour de peti tchapeau.
とてもきれいな帽子だ.
≪註釈≫
対訳テキストの補注によりますと、
エスメラルダの子山羊というのは、ヴィクトル・ユゴー
の『ノートルダムのせむし男』の女主人公、エスメラルダ
のことで、いつも金の角をもった山羊を連れて歩いたと
書かれています.