Nicotto Town



「MY WAY」




「MY WAY」

第1話「入社」

僕の名前は原田 海。
二流大学に通っている大学4回生。
就職活動で毎日忙しい日々を送っていた。

営業会社に入って自分の実力を試したかった僕は、
自動車販売会社と不動産販売会社 この二つに絞って就職活動した。
トヨタ系の自動車販売会社と、大手の不動産販売会社、両方の会社から内定通知が来た。
思案の末に、不動産販売会社を選んだ。
自動車販売会社に内定を断ると面接担当から
留意して考え直して欲しいと連絡があった。
僕は丁重に断って、不動産の道へ進むことにした。

僕が入社した不動産販売会社は世間で言う”ブラック企業”だった。
未だに旧態依然の軍隊式で社員教育をしていた。
研修期間は1ヶ月。
最初の一週間は、不動産の基本的な知識、
次の一週間は、 営業の基本的な知識を徹底的に叩き込まれた。
それが終わると富士山の麓にある ”管理者養成学校”というところに
2週間の合宿をさせられた。
期間参加12泊13日 332,000(税別)会社負担
白い囚人服みたいなものを着せられて、外部と連絡を取ることはできなかった。
テレビ・新聞もスマホは預けて見れない状態だった。
訓練の狙いは
①リーダーとしてあるべき姿を自ら身をもって示し、自身を信頼されるリーダーに変革していく
②卑小な考え・価値観を一新し、積極性をつくり、見違える行動力で人を導き、動かす
③様々なやり方・考えに接し、自分のやり方・考えの狭さ・浅さ ・誤りに気づく
④管理者自ら考え、自分の考えを持ちそれを主張することによる自主性・独立性の強化示唆に富む
⑤スピーチを論理的に組み立て、堂々と人前で話し、社員を説得する

研修内容
①40の質問
自分の考えを短時間で掘り下げて、自分の考えや意図が正しく相手に伝わるように表現力を強化する。

②行動力基本動作
行動力あふれるビジネスパーソンに共通する「10カ条」とは何かを考え、暗記することで、
それを日常の習慣にできるようにする。
第1条
ぐずぐずと始めるな、時間厳守。行動5分前には所定の場所で
仕事の準備と心の準備を整えて待機せよ。

第2条
行動に当っては、短期間に最高の成果を上げる事を心に誓え。
そして心の中に達成意欲がメラメラと燃えるまでは決して行動に移ってはならない。
やってやるぞと一声叫べ。

第3条
指示を受けたら大きな声でハイと返事をし、直ちにとりかかること。
いったん行動を開始した後は、猟犬の如く忠実に、狐の如く賢く、
そしてライオンの如く勇猛に。

第4条
始めに結果の報告書を作成し、仕事の進行と共に空欄を埋めていけ。
これを企画という。

第5条
行うべき作業を列記し、項目に優先順位を記せ。

第6条
行動は敏速を旨とす、このためには動作はきびきびと、
言語は簡潔明瞭にてきぱきと進めよ。

第7条
質問されたら全員即座に手をあげ、指名された者は簡潔明瞭に答えること。
わからない場合はわからない旨はっきり答えよ。

第8条
いかなる困難に直面しても目的を放棄せず、
時が深更に及ぼうとも最後までやり遂げる不退転の強い意志を持て。

第9条
行動の価値を決定するのは、所要時間と結果の良し悪しである。
最も短い時間で最良の結果を得られるよう、常に 手順・方法を工夫改善し、
昨日より今日、今日より明日と、時間の短縮と結果の向上を図れ。

第10条
行動は命令者への結果報告によって完了する。やりっぱなしは何もしないよりまだ悪い。
報告及び事後処理を完璧にやれ。

以上
10カ条を暗記して大きな声で試験管の前で言う。

③共感論争
行動力論争職場に起こる小さな出来事について、どう考え、行動すべきか。
自分の考えを論理的に話して相手を説得、共感を勝ち得る訓練。

④40キロ夜間行進訓練
班単位で40キロを行進する。
出発にあたって班員1人1人に役割が与えられ、行進中はそれを全うし、
バラバラではなく班全員でゴールしなければならない。

⑤管理者の条件訓練
「どのような基準で管理者に選ばれるか」 「管理者は何を期待されるか」 「管理者の任務とは」
これらについて考え、意見を出し合い、論争を行う。

⑥歌唱訓練
歌詞の持つ意味をとらえ、かつ細やかな感情でていねいに歌うことで、
相手に切々と訴える表現力を身につける。
富士宮駅前で 多くの人の前で歌わされる。

⑦素読訓練
ある短い文章に秘められた真の意味を理解し、
管理者の理想の姿と現実とを比較、あるべき姿を理解する。

⑧道順訓練
普段通いなれている最寄り駅から会社、または自宅までの道順も、
知らない人に迷わずたどり着くことができるよう説明するのは、意外と難しい

⑨報告書訓練
報告したい内容を簡潔な文章で表現し、報告書の基本的な書式や書く習慣を身につける。
会社の上司に毎日報告書を書いて郵送する。

⑩私の抱負
訓練の成果を渾身の力でスピーチする。
厳しい訓練の中で自分は何をつかんだか、
会社に戻ったら何を行うのかを、相手に「伝わるまで」訴える。

※ 管理者養成学校ホームページより抜粋

この10個の研修内容を 一つ一つクリアしていく。
全部クリアしたら 卒業できる。
クリアできなければ延長させられる。
8人一組で集団で研修内容をこなしていく。

一番つらかったのは、”40キロ夜間行進訓練” だった。
14時頃出発して 富士山周辺を 40 km 歩いて学校に戻ってきたのが朝の4時頃だった。
簡単な地図しか渡されてなく たぶん40 km 以上は歩いたと思う。
足の裏の皮が数箇所めくれて 靴下が血だらけになっていた。

その次につらかったのは、”歌唱訓練 ” だった。
富士宮駅前で朝の通勤ラッシュ時に” セールスカラス” という歌を
大声で感情込めて歌わされた。
遠くから見てる検査官に聞こえなかったり
感情がこもってなかったら合格するまでやらされる。

この研修を 終えて会社へ帰ると
腑抜けた大学生からみんないっぱしのビジネスマンの顔になっていた。

僕が配属されたのは開発事業部と言う 大型分譲地販売のために
飛び込みセールスで販売する部署だった。
一つの部に2つの課があって それぞれ四つの係があった。
係の責任者はヘッドと呼ばれていた。
ヘッドの下に四名から5名の営業社員がいた。

会社に行くと 掃除をして、朝礼で部長のスピーチを聞いて、
課のミーティングをした後、ワゴン車が置いてある駐車場まで歩いて行く。
ワゴン車で 係ごとに決めたテリトリーまで向かう。
ワゴン車の中では、ヘッドからの指示、営業マン同士ロールプレイをさせられる。
まさしく戦場に行く 兵隊みたいだった。
営業マンを地区ごとに降ろして、迎えの時間までその地域を飛び込み営業する。
部では、僕と同期は約20名、中途採用と、去年の新卒の残りが約20名。
新卒者が1年間残るのが、毎年2・3名 という超ブラック企業だった。
人が辞めると中途採用で、補充していく。

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