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■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(59)

■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義|八 (6)

之れを劇の上に見ても、劇界の自然主義はドイツを最とすべきであらうが、其のドイツに自然主義の入つたのは實にフランスで反動期といはれる千八百八十年代ではないか。而して間もなく茲にも反動として標象主義、神秘主義がハウプトマンやズーダーマンの劇に入つて來たといふ。けれども千八百九十六年に神秘的な『沈鐘』を書いたハウプトマンは千八百九十九年に自然的な『駁者ヘンセル』を書いてゐる。自然派劇の本家たるイブセンにすら、晩年の作には神秘主義、標象主義があるといふ。



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*註1:之れを劇の上に見ても
原本ではこの文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。

*註2:茲にも反動として
「茲」の俗字体か(?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg

*註3:神秘主義・神秘的な
「神」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。

*註4:ズーダーマン
ヘルマン・ズーダーマン(Hermann Sudermann/1857年〜1928年)。ドイツの小説家・劇作家。自然主義の代表的作家。小説『憂愁夫人』『猫橋』、戯曲『名誉』『故郷』『片隅の幸福』など。

*註5:『駁者ヘンセル』
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html




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