763番: スガンさんの山羊(1)
- カテゴリ:日記
- 2020/12/10 17:07:18
スガンさんの山羊
LA CHEVRE DE M. SEGUN
À M. Pierre Gringoire, poète lyrique à Paris.
パリにいる抒情詩人ピエール・グランゴワール氏に
【1】
Tu seras bien toujours le même, mon pauvre Gringoire !
Comment ! on t'offre une place de chroniqueur dans un
bon journal de Paris, et tu as l'aplomb de refuser...Mais
regarde-toi, malheureux garçon ! Regarde ce pourpoint
troué, ces chausses en déroute, cette face maigre qui crie
la faim. Voilà pourtant où t'a conduit la passion des belles
rimes ! Voilà ce que t'ont valu dix ans* de loyaux
services dans les pages du sire Apolo ... Est-ce que
tu n'as pas honte, à la fin ?
訳
君は相変わらず(今と)同じままだろう、気の毒なグランゴ
ワール君! どうしたというのだ! パリのちゃんとした
新聞社の記者のポストが君に提供されたというのに、厚顔
無恥にも断るなんて・・・まあ君、哀れなるかな!見てみ
給え、その穴の開いた胴衣を、そのぼろぼろのズボンを
飢えを訴えるその痩せこけた顔を。だが、それが君が美し
い詩の韻律に燃やした情熱のなれの果てだよ! アポロ様
の小姓として忠実に仕えた10年間の代価なのさ・・・
恥ずかしくはないかね、まったく。
《語句》
chroniqueur (本来は)年代記執筆担当
(狭義には)コラム欄執筆担当者、(広義に)報道記者
ここではより広義に解釈して、「記者」
as l'aplomb de <avoir l'aplomb de + 不定詞 厚かましくも~する
aplomb (m) 厚かましさ
pourpoint (m)昔の男物の胴衣
troué(形)穴の開いた √trouer(他)~に穴をあける、貫く
déroute (f) 敗走、潰走 en déroute 潰走した、ぼろぼろの
chausses (f/pl)(昔の)股引、(男の)ズボン兼用の長靴下
pourtant (副)しかし、けれども
à la fin まったく、ほんとに、もう
【2】
Fais-toi *¹ donc chroniqueur, imbécile ! fait-toi chroniqueur !
Tu gagneras de beaux écus à la rose, tu auras ton couvert
chez Brébant,* et tu pourras te montrer * les jours de
première avec une plume neuve à ta barrette ...*
訳
記者になりなさいってば、君. お馬鹿さんだなあ、記者になりなさい.
美しい薔薇模様入りの銀貨も稼げるんだ. ブレバン亭の常連客にだって
なれるのだよ. 帽子に新しい羽根を飾って
《語句》
Fais-toi chroniqueur 記者になりなさい. <se faire + 属詞 ~になる
chroniqueur (m), chroniqueuse (f) 記者
命令形 ∔ donc ~ってば
Fais-toi *¹ donc chroniqueur / 記者になりなさいってば、君.
donc [発音、ドンク] (本文のような命令形では ドン もあるとのこと)
imbécile [アンベスィル] お馬鹿さん
écus (pl)< écu(m)[エキュ] エキュ(昔の銀貨、盾の紋章の入っていた)、
5フラン銀貨
à (前)~の入った,
écus à la rose 薔薇の模様の入った銀貨
(盾の紋章より、ずっと古い古銀貨になります)
文面から推し量ると、相当高価な貨幣のようです。
現代日本に置き換えると、さしずめ福沢諭吉入りブラウン・ペーパー
Brébant 経営者のブレバン氏がパリに構えた料亭. 有名文士が集まった
有名な店だったそうです.
couvert (m) 食器一式(ナイフ、フォーク、スプーン、大皿、パン皿
バターナイフ、コーヒースプーン、ワイングラス、水用グラス)
* まだまだありますが、とりあえず、最低限これだけあります.
avoir son couvert chez~ ~にいつでも食事に行けるほど親しい
よその家や店に自分用の食器類があるというのはよほどの常連です.
te montrer < se montrer 姿を見せる、現れる
barrette (f) 聖職者用の帽子だが、ここではそれを真似たデザインの帽子
les jours de première 芝居の初演の日、複数になっているのは、
そういう日に何度も行けるということ