Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


ザ・リセス(大休止)

タコスは実は暗躍していた


地球への攻撃を画策していた上層部とのやり取りは悲惨な結果に終わった
<あの星を奪いタコ>
<今はまだタコ>

そして、タコスは盟友である箭兵衛の今後について心底気遣っていた
『私の七番目の足 通常な再生中 また彼に役立てばそれでいい』
タコスは自らの七番目の生え際に活性化し始めた萌芽を縦長のレンズ眼で確認した
それは人類の感覚で云えば掻痒感に近いものだった

地球、人類(2足)、に共感を抱く傾向と目されているタコスは上層部に当然マークされていた
そのマークを逃れるため、厳しい状況だったからこその仲間が必要だった
タコスには旧知のイカスという友人がいた


(蛸烏賊WARSという宇宙的イベントは既に数世紀前で終結していた)


イカスの属している世界では今のところ地球に対する宣戦布告はなされていない
少なくとも人類との共存共栄を図っている時期だ
烏賊墨は彼らのトップトレーディングであり
2足と10足の関係性は穏やかだった


タコス
「人に攻撃する これ可 不可?」
イカス
「バッキャロー ニンゲンバカ アンナノ ホットケ!」
タコス
「上司 攻撃 いや 殲滅 言う」
イカス
「ニンゲンバカ カッテニキエル ホットケバイイ」



タコス
「ここに召集する 箭兵衛を」
イカス
「ニンゲンバカ コイコイ」






箭兵衛の二日酔いの重圧がフッと軽くなった
地球のコア付近で無理やり参加させられた重金属メソッド研修から
いきなり虚空に呼び戻されたのだ
生命維持環境が約束されていなかったら拒否されるシステムは幸いに作動していた



タコス
「腹 良いか」
イカス
「ニンゲンバカ オヒサシブリ」
箭兵衛
「?」


我らが箭兵衛はさすがに目が廻っていた


箭兵衛
「HOW DARE YOU!」
イカス
「グレタカ!」
タコス
「間もなく 攻撃 始まる」




ここでなんとも恥ずかしいことに煎兵衛は腹が減っているのに気付いた
「タコス、すまん、お前の七番目の足をまた俺にくれないか」
「わかった その代わりにお前が何をくれるか 
 そんな 野暮な事 置くとします(オクトパス)」

そう云った直後タコスはネオンライン発光を赤く点滅させ云い直した
「前言撤回 まだ生え戻っていない」


酸素濃度を考慮してイカスが進言した

イカス
「ニンゲンバカ オレノ 9バンメノアシヲタベルカ」
箭兵衛
「実はげそって大好物なんですよ」
イカス
「ニンゲンバカ ワサビ イルカ?」
箭兵衛
「アッテリマエー いや すみません 新鮮なのをひとつお願いしますね」

それを聞いてイカスは2つの鰓心臓を震わせた
人間には判別できない色素細胞の拡張でタコスに意思を伝えた


イカス
「タコス 俺ヤットワカッタ ニンゲンバカ ヒツヨウナイ」
タコス
「旧知 先人(蛸) 皆苦悩した だが争いは避けるべき」



感覚器官の違いでKY状態に追い込まれた箭兵衛はしかし悲しいことに空腹だった

箭兵衛
「ねーっ、まだっ? チンチン(皿を叩く音)」




イカス
「ニンゲンバカ マダ俺ノアシタベルツモリダ」

タコス
「サピエンス 自らを省みぬ 最大の生命力 自己肯定感」

イカス
「ニンゲンバカ アナドレナイ イツカハ イクサニナルダロウ」

タコス
「明日 上申する 実際 深部 始まっている 戦い」

イカス
「センベイ ニンゲンバカ イイヤツダッタ 種チガイナダケ」

タコス
「この宇宙 流行り病 終息する ウイルスも生物も」

イカス
「ウチュウジタイ ハヤリヤマイ ダト?」

タコス
「RNA 自己増殖 現象 同じ」

イカス
「ニンゲンバカ タコバカ イカバカ コレデオk?」

タコス
「おけ」

イカス
「俺ノライフサイズ ミジカイ ナガイ ワカラナイ ソレデモ カンシャ シカナイ」

タコス
「再見 多分 原子レベルでだが」

イカス
「イカバカ タコバカ ニンゲンバカ アナタニモ 箭兵衛ニモ マタアエルナンテ」







タコス
「我訊く イカス 箭兵衛
 き ぬ じ え ぃ 」

イカス
「俺 イカ 箭
 ミライ タコッ」






ザ・リセス





その時
宇宙間の粒子がその使命を終えようとしていた
存在は意味を無くし
すべてがすべてに帰結しようとしていた
無は無に
有は有に
その狭間にある(中途半端な)ものは瞬時に消滅していった





それが再スタートなのか
そもそもの始めなのか
やり直しなのか
分からないことは無かったことにするのか
できないことは不可知なのか



分からないことに挑むのが科学者なのですが
(あるいは宗教者なのですよ)コワイコワイ

余計な物言いでした




なにはともあれ宇宙は終わり
再びそれは同時に始まった





箭兵衛
「ねーっ、まだっ? チンチン(皿を叩く音)」

イカス
「ニンゲンバカ マダ イキテイタノカ!」

タコスの幻影
「旧友 祝う 生命力 汝 不死身?」

イカス
「ニンゲンバカ ナゼ ココニイル?」





箭兵衛
「イカス 9番目のあなたの足を食べるまでは死んでも死にきれません」

イカス
「イゼンノ箭兵衛 イマノ箭兵衛 同一デハナイダロ」

箭兵衛
「どうしてそれが私に分かりますか?」

イカス
「トウトウ シラヲ キリダシタナ」

タコスの幻影
「待つ 必要 解析中」





タコスの声が遠くなった
箭兵衛
「おい、おおっ、タコス、元気だったのか?」

タコスの幻影
「肯定 元気 痛み入ります」
タコスのネオンライトが消えかかっていた



イカスは殻を閉じた
前世紀の原子粛清を通過し図らずも再度の生命化に従った


その眼前に拡がった光景は
もはやイカスにとって合意するほかはない有様だった
そして合意すると同時に彼を構成する粒子は雲散霧消した


そこでは全ての有機体と無機物が混然一体となって渦を巻いていた
過去-未来という概念も時間軸も存在していない空間が再び生まれたのだ





陽子、電子、中性子、中間子
全てが消え、全てが瞬時に現れた
新たな秩序が構築され始めた瞬間だった



ザ・リセス








さて、私はどこから話を始めたらいいのだろう

イカスもタコスも今や既知の空間には存在していない
箭兵衛は空腹のままその存在を終えたのだろう
新たな物質循環システムが軌道に乗るまで
幾度となく繰り返される再生ポテンシャルは自己発動するのだろうか



アンモナイト
ドードー
白鳥座の危機
螺旋のスリル
加速度と幾何級数
渦巻と渦巻の中和



宇宙そのものが流行り病だというタコスの見識は見送られた
イカスはその美味なるゲソを安易に提供する友好性を拒否した
箭兵衛はひたすら空腹を訴えていた

「ねーっ、まだっ? チンチン(皿を叩く音)」





そしてそれから永劫の時が流れたのだ



新たに生成された宇宙の片隅から
微弱ではあるけれど原始的な振動が定期的に発信され続けていた
それを感知する主体は幾度となる進化の段階を超え
後に<白い星>と認知される星で発生した一つの高度な生命種だった


神のようなもの①
「チンチンとは何ぞや?」
神のようなもの②
「おそらく擬音でございましょう」
神のようなもの③
「深入りしない方が宜しいかと」





永劫の時が過ぎても
我らが箭兵衛は生きているのか?
今まだ宇宙の片隅で空腹を発信し続けているのか?
だが多分この話は続かないだろう


(再掲)
タコス
「この宇宙 流行り病 終息する ウイルスも生物も」

(翻訳)
「この宇宙自体がそもそも流行り病なんです
 でも やがて終息します ウイルスも そして生物も 当然私も あなたも」

3000文字ギリギリなのでもう書けない、、、
書くな





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