続 ミモレ丈
- カテゴリ:自作小説
- 2020/04/14 23:58:13
幸太郎は、昼休みに会社の近くの郵便局に行き、3000円を振り込んだ。簡保の不祥事で自粛をしていたと思っていたら、4月1日から、ゆうちょ口座間の振り込み手数料が有料になっていた。5月6日まで、値上げも自粛して欲しかった。
テレワークと違って、会社に行くと、仕事をした気がして嬉しかった。勉強は嫌いでも、学校に行きたい子供と同じ気分だ。定時になると、おさきーと言うと、ラベンダー色のマスクをつけて、会社をあとにした。
地下鉄に乗ると、帰りも空いていて、座ることができた。スマホを取り出して二コタをしていると、四谷の駅で、ラベンダー色のマスクをつけたミモレ丈の女性が乗ってくると、幸太郎の隣に座った。
幸太郎は、なんて運命的な出会いなんだろうと思った。振り込んでおいて良かった。環謝にそそのかされて、振り込まなかったら、後ろめたくて話しかけることもできなかっただろう。
「今朝は、マスクをありがとうございました。お金は、振り込んでおきました。」
幸太郎は、彼女に話しかけた。
「あら、差し上げたんですよ。かえって、気を使わせてごめんなさい。」
彼女の声は、少しハスキーで、色っぽい声だった。
彼女は、アパレル関係の会社に勤めていた。コロナの影響でアイテムが売れなくなり、工場を遊ばせておくこともできず、マスクの製造を始めたらしかった。販売目的でなく、作ったマスクは、もっぱら、得意先に配っていた。
製造する数に限りがあるが、どうしても欲しいと言われることもあるので、断る目的で3000円の値段をつけているとのことだった。
そんな話をしていると、あっと言う間に、地下鉄は西新宿を過ぎた。幸太郎は、「荻窪で食事でもいかがですか。」と誘うと、彼女は「はい」と答えた。
「換気がいいから、焼肉にしますか?それかお寿司?」
「服に匂いがついちゃうから、お寿司の方がいいです。」
「回転ずしでいいですか?駅前に、スシローや三崎寿司があります。」
「回転ずしですか?コロナが心配じゃないですか?」
「酢は、殺菌作用があるから大丈夫だと思います。」
「ほんとかな~」
彼女は、そう言うと、軽く足首を交差させた。朝は、生足だったが、ストッキングを履いていた。午後になり北風が強くなり、少し寒く感じるようになっていた。
回転寿司に乗り気でない彼女に向かって、幸太郎は、寿司のうんちくを語り始めた。
「寿司は紀元前5世紀には、中国にあって、塩と米で醸した魚の保存食だったんです。日本では、大宝律令の祖・庸・調の調の一つとして、川魚のすしが書かれています。今の握り寿司を発明したのは、江戸の花屋与兵衛。わさびを用いて、コハダの握りずしを売り出しました。」
「ふーん」
「江戸っ子は寿司が大好きで、町ごとに寿司屋は3軒、蕎麦屋は3町に1軒だったんです。蕎麦屋の9倍、寿司屋があったんです。」
彼女は、スマホをバックから取り出して、ラインを見始めた。
「いなり寿司は、名古屋で始まったんです。天保の飢饉のときに、揚げの中におからを詰めたのがはじまりです。関西では巻きずし、関東では海苔巻きっていいますよね。マクドとマックの違いみたいで、面白いですよね。」
「ふーん」
「回転ずしで、クルクル回るお寿司も新鮮なんですよ。スシローのマグロだと、レーンを350m回ると自動的に廃棄されるんです。。。それじゃ、ルミネの5階にカウンター寿司があるから、そこに行きますか?」
「駅に直結しているし、ルミネで服もみたいから、そっちの方がいいかな。」
彼女は、スマホを鞄にしまった。
「分かりました。そこにしましょう。」
列車が荻窪駅に着いた。北口から、そのままルミネに入り、エレベーターで5階に登った。このご時世なので、寿司屋は空いていた。二人でカウンターに座った。おしぼりが出され、生を二つ頼んだ。
二人ともマスクをとり、カンパーイとグラスを軽く合わせた。目と目が合い、マスクをとった彼女の顔を見ることができた。グラスを置くと、彼女は、カンパチ、ヒラメ、タイを頼んだ。
幸太郎は、水槽の中のアジを見つめていた。
なるほど、しっかりした肩幅を隠すためのシフォンブラウス、膝小僧を隠すためのミモレ丈のスカートだったのか。まさか、マスクを外したら、薄っすらと髭が生えているとは。
幸太郎は、東京は恐ろしい街だと思った。
ご飯を男性に奢ってもらうのが当然であったバブルの頃の空気が、まだ、六本木あたりに漂っているのかもしれません。残念ながら、六本木は、吉野家にしか行ったことがありません。
寿司屋では、寿司を食べましょう。
スシローのスイートポテト(今はもうないけど)、パンナコッタ、うどんが好き!
きっと女性でしょう。そうじゃなきゃ、幸太郎が可愛そうです。
本当面白いね
はてさて彼女の性別は・・・(;^_^A
幸太郎危うし??
学生の頃に間違って、カウンターの立派な寿司屋に入ってしまい、玉子を一個だけ頼んで、撤退しました。それ以来、カウンターの寿司は鬼門なのです。一度、銀座久兵衛の中トロを食べましたが、小僧寿しとの違いが分かりませんでした。そんな、貧乏性の舌を持ってます。
wineさん
荻窪駅の南口の商店街に、讃岐を名乗るうどん屋がありますが、肉うどんが1980円します。香川では、198円でも普通なのに10倍です。ふざけてしているとしか思えません。その肉うどんを食べてしまいましたが、和牛の美味しさよりも価格が気になって仕方がありませんでした。なので、荻窪でうどん屋さんは、登場しないのです。
東京はいとも簡単に女性がお食事に誘いに乗るのですねぇって思っていましたぁ~w
ですよねぇ~
世の中そううまくはいかないものですねw
でも、幸太郎さんにとっては、デートのはずがおっさん同士の食事会になっちゃったんですね^^;
私も、出来れば回らない食べ物のほうが好きだし、、
食品ロスの面からも、にぎりのお寿司でお願いします。
ネギトロといくらとかんぴょう巻と玉子のローテーションを許してくれるお店を希望します♪
ミモレ丈の振込用紙でもビックリしたけど、今回の続ミモレ丈のオチも楽しかったです!
薄っすらと髭が生えているって言葉で男性だったんだーって思ったり、もしかしたら薄っすら髭の生えた女性なのかもしれないって思ったり、どっちなんだろー?
そうだったのか。今まで、女性との出会いを求めていたのが、間違っていたのかもしれない。いい男の出会いを求めるべきだった。男ばっかりの我が社が、お花畑に思えてきた。
3000円取られたあげく、きっとお寿司もおごらされて、今後の発展も望めない。
人生、たまにはこういう災難もありますよね~私は遠慮しますが^^
こうなったら運命の出会いと自分に言い聞かせて、幸太郎さんが新しい世界に
開眼することを祈ります・・・w
人生、知らない方がいいこともありますね。気づかなければ、楽しいひとときになったかもしれないのに、残念です。間違いなく、ひげ濃いめの女性です。
スズランさん
どちらもありなんて、スズランさんBL本を読みすぎです。回転ずしも美味しいですね。カウンターのすしなんて、値段を気にしながら食べるより、クルクルの方が楽しいです。
私は回転すしが食べたくなりました(゚¬゚)
今はどちらでもありという方も増えてそうだし、しかも東京!?
幸太郎さんは、今後どうされるのでしょうね( *´艸`)?
このあとの会話はどうなったのか、、、
髭濃いめの女性と女装した男性、どちらが好みでしょう(^^;
ひょっとしたら、ひげの濃い女性かもしれませんが、ストッキングで、夕方になり伸びてきたすね毛を隠すあたり、怪しいと思います。
genzoさん
普段は、会社のトイレで髭を剃ってから帰るのかもしれませんが、マスクをしているからとさぼったのでしょう。genzoさんも油断したらいけません。
オレンジ先生
きっと、綾瀬はるか級の作り物の胸に視線が釘付けになり、注意がおろそかになっていたんだと思います
今度から、気を付けるようにします。
環謝さん
今度から、悪役でちょいちょい出演してもらおうかな。肩を後ろに押しやるのは、胸を大きく見せるようにするためにも思える。環謝さんも試してみましょう。
Twitterでもよく見かける、完全に見た目は女子にしか見えない女装家の皆さんがいらっしゃいますが、動画を見ると声はまさに男性の低音ボイスです。
無理して裏声出してる方もありますけどほぼ分かりますw
なので、幸太郎さんも落ち着いてれば声で分かりそうなものですが、思い込みって怖いなぁwwwwwww
あ、ちなみに女装家の方の肩幅を隠すコツを。
背筋を伸ばして、腕を後ろで組んで肩を後ろへやるような姿勢にすることだそうですよ。
笑っちゃいました。
お近づきになりたい気持ちは
危険ですね^^
・・・見る目養ってーーーー^^
まさかの・・・・((((;゚Д゚))))
ミモレ丈の女性は、まさか男性だったんですか?