テレワーク(前編)
- カテゴリ:自作小説
- 2020/03/07 10:38:01
コロナ対策で週に2日、テレワークをしなければいけなくなった。ドライバーをしていた頃なら、テレワークをしたくても出来なかったが、健介は、大きな怪我がきっかけで、長い時間、車の運転をすることができなくなり、財務部に籍を移していた。
リビングのパソコンでリモートシステムを立ち上げ、画面にグルグル回る輪っかを見ていると、怪我をした時のことを思い出した。
正月に、希実子と3歳になった長女の美咲と香川の実家に帰省していた。元日の午後に、母が雑煮を作ってくれた。
「希実子さん、香川の雑煮は、餡餅が入っているの。変わっているでしょ~、お替りもあるわよ。」
「お母さん、すいません、お手伝いもしないで。」
http://sanukinomoto.net/user_data/story04.php
希実子は、餡餅雑煮を一口食べると、健介の方を見た。母が、お茶を淹れてくるわねと言って、キッチンに向かうと、健介の耳元で呟いた。
「どうして、雑煮が甘いのよ。キモイわ。健介食べて。」
そう言うと、希実子は餡餅を箸でつかむと、健介のお椀に入れた。
母も歳をとり、耳も遠くなりかけていたが、不思議とこういう時は耳ざとい。お茶を淹れるのをやめて、自分の部屋に引きこもった。西高東低の気圧配置のせいか、元日の実家には、冷たい空気が流れていた。
夕飯にお節をつついていると、母が新聞を開いて、「明日、長尾寺で三味線餅つきがあるから、健介、希実子さんと一緒に見に行って来たら。うどんも食べてくればいいでしょ。私は、美咲ちゃんと八島寺に行ってくるわ。」と言った。
母は、美咲の方を見ると、「お婆ちゃんと、ペンギンさんやイルカさんを見に行こうね。ソフトクリームも食べようね。希実子さんいいでしょ。」と言った。
希実子は、母が美咲にうどんに、母恵夢(お菓子)、イチゴなど食べさせまくっていることに、内心、イラついているが昨日の餡餅雑煮事件があったので、「お母さん、お願いします。」と言った。
次の日、希実子と87番札所長尾寺に向かった。車で30分もかからずについた。三味線の音色に合わせながら、150kgもある大鏡餅を搗く。明治時代に住職が、最近の若者は、勉強ばかりしていて軟弱なものが増えたと力試しを奨励したのが始まりだと言われている。
「パパ、ほら、あそこ、力持ち競争の参加者を募集してるわ。優勝賞金10万円だって。普段、配達で重い荷物を運んでいるんでしょ。10万円よ。」
希実子につれられて、参加者募集をしているテントに向かった。
「無理だって、三方(台)と鏡餅、合わせて170kgだよ。会社の配達だって、20kg以上は台車を使わないといけない規則になってる。」
「子供だって、45kgのお餅を運ぶのよ。10万円なのよ。頑張って。」
http://tawasho.cocolog-nifty.com/tawasho_/2005/01/post.html
開始を待つ間、屈強な男達がベンチプレスで120kgだったら上げられると話し合っている。まだ、始まっていないのに、なんだか、貧弱な自分が情けない気持ちになってくる。
自分の順番が近づいてきた。鏡餅を抱えて50m歩けば優勝の可能性がある。健介は自分に、できる男だと言い聞かせた。何度か拒絶されたが、希実子と結婚も出来たし、美咲も生まれた。仕事だって、主任からエリアマネージャーに出世した。
介添えの人が6人がかりで鏡餅を持ち上げ、腰の廻しに三方を掛けるように抱えさせてくれる。一歩踏み出そうとした途端に、ギクッときて腰に激痛が走った。介添えの人が、崩れ落ちそうになった身体を支え、鏡餅を放り投げてくれて、つぶれなくて済んだが、立つもことも出来なくなり、救急車で病院に運ばれた。
次の日、希実子は、「仕事があるから」と美咲をつれて東京に戻り、健介は、一週間、入院した。
健介は、会社のイントラネットにアクセスし、内部統制報告書のチェックを始めた。財務部は大きく3つのグループに分かれている。経営企画部が作成した事業計画に基づいて資金計画を立てるグループ。資金計画に基づいて、社債の発行や銀行から資金を調達するグループ、それと、健介が所属している監査や業務手順をチェックする内部統制グループ。
健介は、業務プロセス統制を担当していたが、急遽リスクコントロールにコロナウィルスへの対応を追加しなければならず、テレワークと言ってものんびりすることはできなかった。他のグループも、中国関係の荷動きが減少し、事業計画の見直しに追われていた。
つづく
経済活動に大きな影響がでますね。金曜の夜に送別会でこっそり飲み会をしましたが、赤坂の通りは閑散としていました。普段は、平日でもサラリーマンや外国人で、通りは車が進めないくらい車道にも人がふれていますが、どこかに行ってしまいました。通りから「俺のフレンチ」を見るとお客さんでいっぱい。9割は女性です。男性は感染したら会社で立場がないと超自粛中だと思いますが、女性は割り切っていますね。
mさん
そう思います。煽るマスコミと煽られる市民が、誤った方向に進む一番の原因だと思います。ダイヤモンドプリンセスで日本の対応を叩きまくったアメリカの新聞、特に、ニューヨーク・タイムス。グランドプリンセスの対応を注視しているところです。News Weekのこの記事が面白かったです『危機を作り出したのはウイルスでも政府でもなくメディアと専門家』。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2020/02/post-39.php
私は子どもの頃からずっと「親の戦争体験」聞かされてきて
「御池通り、五条通りは御所を火事から守る為。強制撤去→通りを広げた」
庶民は黙って空襲や赤紙で子供をお国に差し出すのに耐えた。
・・・・・今、政府に文句ばっかり言ってますよねェ・・・・・・
私も文句言ってますが、マスコミは戦時中「戦争、後押し」反省しすぎ・・・今、「新型コロナ対策にケチつけすぎ」←←マスコミ「あつものに懲りてなますを吹く」←そんな気がする(-.-)
私の仕事は現場なのでぜったい会社に行かないと仕事が出来ないです~。
とうとうコロナ関係の経済波及が発生して観光バスの運転手さんが大量にリストラにあって
しまいました(;゚Д゚)!観光バスは人だけを乗せるだけじゃなく、積載量は少ないかもしれないけど
物流にも活用してくれればそんな大量にリストラとかしなくてもいいのではないかな。
もっと臨機応変にニュートラルに横の繋がりでこの負を打開出来ないかなって素人ながら思いました。
去年お土産に母恵夢を頂きました^^美味しかったです♫
我が社も貸し出しノートパソコンが少なくて、自宅パソコンに摩訶不思議な機械をつけて、通信するようになっている。しかし、設定が難しく、今週もうまくつながらないと思う。部下達は、テレワークの間、ポテチを食べながら、セーラームーンを見ていると思う。
wineさん
コロナウイルスの対応は簡単です。良く食べ、良く寝て、体力温存し抵抗力を高める。イライラせずに免疫力を高めることです。すなわち、普段通りの生活を続ければいいのでしょう。したがって、今日は、食っちゃ寝生活で一週間分の体力を養います。
れんげさん
ぎっくり腰になったことがあるんですね。長野で鏡餅運び競走に参加されたのでしょうか。女子の部もあるんですね。腰を傷めないようにするためには、お相撲さんのように廻しをつけて、そこに三方を載せる。骨盤に荷重をかけて脊椎に力をかけないことが力学的にいいと思います。
あずさちゃん
映像を見る限り、かなり地味な大会である。観客の服装も地味で彩りが少ない。せめて、BGMでも流した方がいいような気がする。ここに、あずさちゃんが出場(女性の部45kg)したら、夜のニュースで放送されるでしょう。こっそり、餡餅雑煮の特訓をしなければいけない。美味しいけどね。
https://www.youtube.com/watch?v=rkQOu4udX6I
お母さんに直接 お雑煮は食べ慣れてる味があるから今度作らせてくださいって
言うと思います それかあんこのお餅はそれだけで食べたいからお椀に入れないで
別にくださいってお願いするか(*‘ω‘ *) だって毎年お正月行事になるわけでしょ
どこかのお宅で一度だけなら何も言わないけど(;^_^A
普段重量挙げかレスリングのトレーニングしてる人ならともかく
無理でしょ170キロって!健介は「別の方法で10万稼ぐからな」って
パスしてお給料でお洋服やアクセ買ってくれたり美味しいレストランに
連れてってくれたらよかったと思います
出来た、心がけである。くれぐれも、うどんを食べ終えた後、「私、蕎麦の方が好き」と言わないように。ビールを出された後、「焼酎か日本酒ないの」にも気をつけよう。
A型にもいろいろいるはずだ。おそらく、A型はウドンとシュークリームが大好きで、土日は早く目覚めて、スーパーの2割引のシールが大好きだと思う。少なくとも、1名該当者がいる。
健介さんが希実子さんに『パパ』と呼ばれていることに
ちょっと感動しましたぁ(*´▽`*)~♪
希実子さんはきっと血液型はA型ではないでしょうねぇ~
A型の私は そういう場面では空気を読んで長いものに巻かれます
ましてやコソコソ文句を言ったりなんか出来ませんもん・・・
嫌いな物は我慢して丸呑みです(+o+)
それにしても・・・職種がかわるほどの大怪我とは
恐るべし大鏡餅ですね~
辛いんですよね、、(>_<)、、
どうしても、二人の結婚には、不安感がつきまといます。。
人には添うてみよ馬には…とか言いますが、、
もやもやしながら、続きをお待ちしています。
優勝賞金10万円で参加して入院して大変でしたね。
コロナウィルスへの対応が気になるかな。具体的にね。
月日は流れて幸せな家庭を築けているんだと和んだら、
油断はできませんね(笑)
うちの会社は、ノートPCが確保できず、貸与できないのもあって、
在宅勤務できる人がかなり少ないことが今頃判明しちゃいました。
ニコタに住んでる私はPC必須ですから、在宅勤務も可能でございますわ。ふふ。
きっと、山あり谷ありの道筋だったと思いますが、健介と希実子は無事、結婚することができました。健介が無事、アニメオタクから卒業できたのでしょう。いつか、卒業するときがやってくるのかもしれません。経験上、アニメから足抜けで来ても、ガンダムから卒業することはできないと思います。
環謝さん
リアの話だと、170kgの鏡餅を抱えて、トラックを30周くらい走ったに違いありません。10万円は貰ったようなものです。10万円あれば、ケーキ包丁とマドレーヌ型を手に入れて、エシレバターを大人買いします。焼肉も食べにいきたい。コロナでお客さんが減ったので牛角が1000円引きになっています。
読んだだけで痛そうですね(^^;)
テレワークが出来て良かったけど、奥さんやお嬢さんと一緒に居られなくなっちゃったんですね( ゚д゚)
なんで珍しくハッピーエンドな話なのに素直にそこで終わらせてないのwww
ちな、最初沖人さんのリア話かと思って読み始めましたが、3行目の健介という文字であぁなるほどと気付きました!
気になってたので嬉しかったです。
県違いだと、例の餡餅雑煮に混乱するでしょうね。
前に同県でも、好みが分かれるとあったので、お嫁に行くと大変ですね(;'∀')
他県同士の円満は、2種類作るとありました(笑)
それにしても、仕事での怪我ではないのが、沖人さんの小説らしいなあと
思いました( *´艸`)
コロナ対策がリアルですね(;^ω^)