Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


ほっかいどいんこ 昼メロいんこ「愛の嵐」1

1章 別離

見て見ぬフリをしてきたが 目の前の現実は のっぴきならぬ
段階に達したことを伝えていた。
言ったところで 彼女は納得しないに違いない。
しかし。だからといって これ以上 事態を悪化させるわけには
いかなかった。
正面の彼女を見据え その人物は ぎゅっと結んだ口をこじ開け
た。
「君と結婚は出来ない・・・すまない・・・。」
きょとんとして 見つめ返す彼女の無垢な瞳が 耐えきれず
また 顔をそむけ 絞り出すしかなかった最後通告。
いんこと飼い主は 結婚できないんだ。

2 憎悪

餌を つつきながら 彼女は 無償に腹がたっていた。悲しくても
腹が減るという 泥臭い現実。
いっそ このまま はかなく消えてしまいたいのに、なぜ 私は 
この餌が美味しいと感じてしまうのだろう?
私をふったあいつは 私が餌を食べてるのを見て 安心してしま
ってるではないか!
餌くってりゃ いんこは幸せだとでも 思ってるのね!
しかし 腹がたてばたつほど 餌がますます 美味しくて、彼女は
心でホロホロ泣きながら 餌をポリポリ食べ続けるしかなかった。
そうよ 食べるわ、食べなくちゃ。私は生きて あいつに復讐して
やるのだ。
砂漠のように乾ききっていた彼女の心に 一点 じみじみと憎しみ
が滲み出て それは やがて 心の中にどす黒く沁み渡った。
復讐してやる・・・。
そう、あてつけに愛のない結婚をしてやるのだ。
他の男のものになった私を見て きっと あいつは 嫉妬で身も心
も妬けて 苦しみもがくのだ。
餌食ってる私を 笑顔で見てられるのは 今のうちよ!
ポリポリ ポリポリ ポリポリ・・・・復讐を誓う彼女の餌を食べる音
が 不気味に部屋の中で 響き渡っていた。

3 打算

「ほんっと だらしない男よね!」
声をかけられて 彼はびっくりした。同居している彼女が声を
かけてくるなんて 思いもよらぬことだった。

彼女をずっと好きだった。結婚したいと思っていた。
かって。その場の勢いでプロポーズした時 彼女は あっさり彼
を一蹴したけれど 彼の想いは消えることはなかった。
「あなたの気持ちには 答えられないの、だって 私は あの人
を愛してるのだものーーーっ!」
彼を蹴り倒しながら 彼女は叫んで 頬を染めたのだった。
自分が割ってはいることなぞ出来ない世界がそこにはあった。
完敗であることを 彼は悟った。
でも なぜか 気持ちは爽やかだった。彼女が幸せなら それで
いい。僕は 彼女を見守り続けば それでいい・・・。

蘇るちょっとほろ苦い淡い記憶は 彼女の声で破られた。
「あなた 私が好きなんでしょう?うじうじ 背後から 私を見つめ
るだけで。ねぇ それで 幸せなわけ?」
吐き捨てるような 彼女の言葉の激しさに 彼は言葉を失って
呆然と彼女を見つめ返すしかなかった。
「愛しているなら奪えば いいじゃない!それとも あのプロポー
ズは 単なるポーズ?美しく身をひいて 自己満足の世界に
浸ってるってわけ?」
そこに かって頬を染めた可愛い面影はなかった。しかし ギラ
ギラと瞳が輝き 激情に身を震わせた彼女の美しさに 彼は
圧倒された。
「愛してるよ・・・今でも。ずっと好きだった・・・。」
「なら!私を奪いなさいよ!奪ってみなさいよっ!」
彼は 混乱していた。これって プロポーズなのだろうか?
しかし 彼女が好きなのは・・・・?
「あの人といっしょになるんじゃないの?」
あの人というフレーズで彼女は 一瞬ビクンとした。が キッと
顔をあげると 言い放った。
「私の気持ちは 関係ないわっ!問題は あなたが 私を奪って
結婚する気概があるかどうか、だけよっ、このへっぴり腰!」
あまりの言葉に頭にカッと血がのぼり 彼は叫んだ。
「僕らは今から夫婦だっ!僕らは この瞬間 結婚したんだっ!」
ピシッ!ガシャ-ン!外で雷が鳴り 雨がバタバタと家を叩きつけ
2羽は びっくりした拍子に ガバッと抱き合った。それが 彼らが
夫婦になった瞬間であり 雷雨は 彼らの行く末を暗示してるかの
ようであった。




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