Nicotto Town



失敗作だ

注:平成生まれの方は、YouTubeで”Europe Carrie”と”ドリカム 未来予想図Ⅱ"を聞いてから、お読みいただくことをお勧めします。


しばらく暖かい日が続いたが、突然寒くなり、北日本や日本海側では雪が舞っていた。京子は郊外の駅を降りると、住宅街に向かった。懐かしい道を三年ぶりに歩いていた。

寒さを避けようと、道行く人たちは早足になっていたが、京子の足取りは重かった。真司と別れてから三年が過ぎた。真司が誰かと付き合っていてもおかしくない。そんな時は、どんな顔をしようか。カフェがどうなったか気になってたのとごまかそうか。真司に会いたいと思ってから、何度も同じことを考えていた。

駅からカフェまでは300mも離れていなかった。答えを出すには短すぎた。看板に書かれた店の名前が変わっていた。京子の心の中で、三年前に戻れるかもしれないという期待が薄れていった。

ここまで来たんだからと、ドアを開けた。「いらっしゃい。」懐かしい声。真司はしばらく京子を見つめると「お好きなお席にどうぞ。」と言った。京子はカウンターに向かって座ってるとコートを脱ぎ、隣の席にかけた。

何を期待していたのだろう。久しぶり、元気にしてたと言われると思っていた。真司は、京子を喫茶店を訪れた客としてしか扱うつもりはないようだった。真司は、カウンター越しに、「どうぞ」と京子にメニューを渡した。

京子は、メニューを見ずに「珈琲」と答えた。真司は、少し考えるようなそぶりを見せると、豆を挽き始めた。店内には、オルゴールの音色で映画のテーマ曲が流れていたが、豆を挽く音でかき消された。

真司はネルに粉を入れ、ドリップポットでお湯を注ぐと、いったん、手をとめた。
「久しぶり、元気にしてた?」
「店の雰囲気が変わったわね。あの頃の面影はないわね。」

真司は、ゆっくりと、ネルにお湯を注ぎ、サーバーに珈琲を落としはじめた。
カフェの頃は、明るい基調の店内だったが、テーブルの数が減り、壁一面に本棚が据え付けられ、雑誌や本で満たされていた。レジの近くには、車やバイクの模型が飾られていた。

「どうぞ。コロンビアとグァテマラのブレンド。少し酸味がある。」
京子は、冷えた身体を温めるように、両手でカップを包んだ。親指のネイルが取れていた。慌てて来たのが、真司に分かったのかもしれない。

真司は、カップを持つ京子の左手に指輪がないことを確かめると、カウンターの奥に向かった。オルゴールの音色が止まると、ジョーイ・テンペストのハイトーンの切ない歌声が流れてきた。

EuropeのバラードCarrie。披露宴の新郎・新婦入場のBGMに選んだ曲だった。京子は、別れの曲を披露宴で使うのはおかしいと言ったが、真司が二人の想いでの曲だからと選んだ。

"When lights go down I see no reason, For you to cry we've been through this before In every time, in every season God knows I've tried So please don't ask for more"

そう、真司が私のためにずっと努力をしてくれていたことは知っていたわ。

 "Can't you see it in my eyes? Though this might be our last goodbye"

二人の最後のさよならって、もう会わないっていうこと。

 "Carrie, Carrie Things they change my friend Woh ohh, Carrie, Carrie Maybe we'll meet again Somewhere, again"

 もういちど、どこかで、出会うってどういうこと?

数組のお客が続き、真司は、注文を受けたり、珈琲を淹れたりしていた。京子は席を立ち、レジに向かうと、真司が手をふきながらやってきた。

「今日はおごり。ごめん、お店の中で話しにくかったから、音楽で伝えようと思ったけど、分かりにくかったね。」
そういうと、真司はレジの後ろから、バイクの模型を取り出し、テールランプを5回点滅させた。

披露宴の最後に流した曲だった。
京子は「珈琲のお替りをもらうわ。」というと、カウンターに戻って行った。

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2018/12/13 00:10
さなちゃん
5回点滅のためだけに、だらだらと前振りを書いてしまいました。

ゆりかさん
未来予想図Ⅱを知らないことに、年齢差を痛感しました。

yonaさん
僕も英語はさっぱりです。だから、ちょこっとしか訳してません。

たまちゃん
オペラですか。耳元でささやかれたら、鼓膜が破れそうです。

ひまわりさん
ブレーキランプ5回はいいですが、ヘルメットで5回コツコツするのは多すぎだと昔、思ってました。

みーぴこさん
真司は、真面目で落ち着いた大人のはずだったのですが、いつの間にか軽くなってしまいました。

オレンジ☆さん
3年離れていたら、急に言葉で想いを伝えるのは難しいかなと思って音楽にしてみました。
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2018/12/12 23:15
3年・・・
ふたりとも同じ気持ちで
いたんですね・・・。
気持ちの伝え方が
優しくていいですね^^
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2018/12/12 23:01
沖人さん、こんばんは✿

うふふふ・・・ドリカム世代w懐かしいというか・・・

真面目な真司さん、意外とベタだったんですねw
京子さんは真司さんのそういう チャーミングなところが好きなんだろうなぁ~w

もちろん!この作者さんも 可愛いですねww
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2018/12/12 22:25
初めまして。

胸が痛くなりました。

5回点滅 ……。素敵です。
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2018/12/12 21:33
映画のような2人ですね♪
気持ちの伝え方が素敵~!
音楽の趣味が合うと、こういう素敵なことができるからいいですよね。
自分が音楽を使って告白するとしたら・・・やっぱり好きな歌がいいし・・・
ワルキューレでジークムントが歌うあの歌かな~♥♥♥
って、兄と妹の近親相姦だった。やべぇw
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2018/12/12 13:37
おっしゃれー。
時が流れて、今度は、お二人本当に幸せになりますように。

5回点滅世代です。
洋楽は、わからない~。どういうこと?そういうことか、です。
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2018/12/12 07:28
おはようございます、沖人さん。
音楽に疎いもので、2曲とも知らずに読んでしまったのですが、歌詞がわかると「なるほど!」です。
真司さんと京子さんは、再び気持ちが通じ合って良かったですね(^^♪
お店は、やっぱりスイーツ大好きおじ様で溢れる癒しスポットになっていたのでしょうか。
Europe Carrieの和訳を読みましたが、確かにわかりにくいかも。
京子さんも戸惑ってしまいますね。
5回点滅の意味がわかると、微笑ましくなります(*^^*)再縁おめでとう。二人に幸あれ。
素敵なハッピーエンドでしたねvvv続きが読みたい願いを叶えてくれてありがとうございました。
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2018/12/12 00:21
(・_・D フムフム
5回点滅の意味はわかりましたw
ハッピーエンドってことですね( ´艸`)ムププ




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