悪魔なので邪神を育てる事にした 40話
- カテゴリ:自作小説
- 2018/12/04 19:41:58
~ もっとも難関な山プジョサン ~
ダレイク国を挟んでナパーラ聖神国の反対にある大山脈のど真ん中。
廻りの山は8千メートル級の山々に囲まれた、3776メートルの成層火山だ。
高さ自体は周りの山より低い、しかしそこまでたどり着くことが難しいのだ。
ディーアズワールドのK2である。
その頂上に今、1人の悪魔と1匹の邪神様が居た。
この剣と魔法の世界ですら、難関と呼ばれる8千メートル級の山を越えて、真ん中にある富士山の様な形の山プジョサンの頂上に居るのだ。
プジョサン山の凄さは、まず回りの8千メート目級の山に囲まれている事。
この周りの山脈を登るのですら命がけで、途中何か所かベースキャンプを作らなくてはいけないし、また高地で有る為 地球なら登山用酸素缶や酸素ボンベ必要だ。
これが無い時代には登る事が出来なかったのである。
現在でも登山途中で酸素ボンベの盗難が問題となって居て、登山どころか途中で引き返さなければならないと言う問題が発生している。
8千メートル級の山とは、そう言う所だ。
酸素ボンベの無い代わりに魔法のあるこの世界は、魔力で酸素をかき集める。
ただし絶えず魔力を使うため体力も魔力も相当量必要で、尽きたら死があるのみである。
空を飛ぶ魔法もあるが、結局零戦ですら飛べないような所を魔力だけで何とかしろと言うのは無茶だ。
行為の術者でも飛ぶだけでも5分も飛べない程の魔力が居る。
そしてその山脈を登りきると霧で覆われた下りが待っている。
足元すら見えにくい濃い霧が立ち込めたカルデラ。
元は1万数千メートルだったと思われる山が崩壊して出来た、自然の要塞。
そこに吹く風は、高い山に当たり、カルデラの中へ雲を落としていく。
極端に寒く、空気が薄く、斜面は途轍もなくきつく、濃い霧が立ち込め、足元は湿気の為いつもアイスバーン。
例え山脈を上れても、ここを突破するのは不可能とされている。
1度だけ偉大な大賢者と言われたランと言う者が、プジョサンのふもとまで、荒行の為たどり着いたことが有るが、たまたま晴れた霧の中から見えたプジョサンを山脈の頂上から確認しただけで、ふもとまで行く間に濃い霧に阻まれ、結局プジョサンには登れず帰って来た。
因みにこのランと言う大賢者の名前は、王国の通貨単位になって居いて、銅貨から金貨に至るまで、その横顔が刻印されているほど有名だ。
その大賢者さえ登頂を拒んだ霧に包まれた山頂に、今バアルと邪神様は立っている。
まぁ、レベル50前後で魔王が倒せる世界で、レベル666と言うチートでの移動なのだが・・・
「邪神様、この山の噴火口から入っていくのですか?」
「うむ、ここの地下2千メートルくらいの所にあるのぅ」
「1000メートル程下がマグマになって居るようですが、本が燃えてしまっているのでは?」
「いや、3000メートルまで潜ると、横穴があっての、そこは聖域となって居てマグマが入っておらん。 後は1000メートル登るだけじゃ」
「随分と念を入れた封印ですね」
「・・・」
邪神様はその言葉を聞くと何故か黙った。
「しかし邪神様、流石の悪魔と言えどマグマ表面位は何とかなりますが、3000メートルも潜るとなると、温度だけでなく圧力に耐えられないのですが、どうやって入ったらいいのでしょう?」
「うむ、これじゃ!」
すると邪神様はポイっとマグマの上に船を出す。
それは潜水艦だが、平たく、変わったスクリューを後ろでガードした様な尾翼の付いた潜水艦。
のミニチュアの感じがした。
あえて言うなら「青〇6号OVA版」に近い。
「これでマグマの底まで移動して、横穴に入るのじゃ」
「わかりました、早速行きましょう」
プチ青の〇号に乗り込む邪神様とバアル、こうしてマグマの中3000メートルまで進むのだった。
横穴に入るとすぐに、潜水艦が横付けできる空間に出た。
そこから降りると長い階段があり、美しかったであろうタイルが張られている。
長い年月でタイルの表面は溶けかかっているが、上に行くほど涼しくなり、タイルの形もしっかりしてくる。
バアルは懐かしいものを見たような気がした。
古代オリエントタイル張りに似ているからだ。
こうして邪神様とバアルは1000メートル登ると、分厚い耐熱性の扉に当たった。
鍵は掛かっていない。
そのまま入るバアル。
すると中には受験前に必死で勉強しているような女子高生風の女性が、本を写本していた。
「君はいったいどこから入って来たのかね?」
「ああっ! もしかして持ち主さんですか!? ごめんなさい、ここの資料がどうしても欲しくて抜け穴から入ってきてしまったんです」
「抜け穴?」
「はい、この山を囲む山脈の西側のふもとに、ここの中に入れる道があるのです」
「そ・・・ そうだったのですか・・・ ところで邪神様、知ってましたね?」
「ぴゅ~♪ぴゅ~♪」
邪神様は下手な口笛でごまかした。
こうして3つ目の神器を手に入れたのだった。
もちろん受験前の女子高生の様な女の子(モブなので名前はない)に模写させた後だが。