自分を見つめなおす旅(完)
- カテゴリ:レジャー/旅行
- 2018/10/23 23:00:27
関越道の沼田ICを降りる頃には、すっかり暗くなっていた。カーナビに導かれて、北に向かう。川場村の道の駅を過ぎると、人家もなくなった。徐々に山道になり、つづら折りになっていく。
すれ違う車もなく、不安になってきとき、トンネルの手前で、野営場の看板を見つけた。砂利道に入り、山の中に入っていく。車がすれ違えないほど狭く、右手には山肌が迫り、左手は崖になっている。
砂利道の上に黒いホースのようなもが横断している。沢水を流すためかなと思って、そのまま乗り越えていく。いくつもあるなと思って、車から降りてみると、地面から突き出した鉄板だった。
明かりの無い真っ暗な山道をヘッドライトだけで走っていたので、不安が爆発しそうになる。パンクしたらどうしよう。麓からは数十キロは走ってきている。引き返したいが、道が狭くて転回できない。
そのまま進むしかないが、なんでこんなところに、来ちゃったんだろうと泣きそうになる。少し広いところで、切り返して、来た道を戻る。舗装道路に出る手前で、空き地がありそこに車を停めて、タイヤを点検した。異常はないみたいだ。
時計を見ると21時を回っている。月が天中に昇り、雲一つなく、月明かりで影ができるほど明るい。月が沈むまで6時間はかかる。アラームを3時にかけて、車の中でひと眠りすることにした。
普段は、日付が変わっても二コタをしているし、サービスエリアに寄るたびにコーヒーを飲んでいたので、なかなか寝付けない。携帯の電波もはいらず、スマホも使えない。車の中で1時間ほどもじもじしていたら、1台の車がやってきた。
こちらを見ようとしたのか、一瞬、車を停め、僕が引き返した砂利道に入って行った。何しに来たんだろうと考えたが、死体を捨てにきた凶悪犯以外には思いつかない。
半径20kmには、人っ子一人いない山奥にいる。またまた、不安がこみあげてくる。車の中で、じっとしていられない。
車から降りて、空を眺めた。満点の星空だ。美しい。流星群を見るまで、帰るわけにはいかない。北の空に輝く、カシオペア座が勇気を与えてくれた。
しかし、凶悪犯のことが頭から離れない。相手が二人だと勝てる気がしない。拳銃もってたら、お手上げだと、よくないことばかり考える。ここで、死んでも誰も気付いてくれないんじゃないか。ここに来ること誰にもいっていないし。
出社しなくなったと、会社の人が、部屋を訪ねてくるんだろうな。普段から片付けをしておいてよかった。掃除もしたばっかりだしと思ったが、本棚の「はじめてのお菓子教室」の隣にある本のことが気になった。
女子の方々が多いここでは書けないが、それが見つかるのはまずい。これまで築き上げてきたイメージが崩壊してしまう。ここで死ぬわけにはいかない。生への執着が生まれてきた。カシオペア座が勇気を与えてくれた。
そうとなれば、珈琲でも飲もうと、豆を挽き始めた。風もなく、静まり返った中で、ギリギリギリと音が大きく響く。コンロにケトルを乗せて、南アルプスの天然水を注ぐ。硬度30の軟水。ドリップには軟水、エスプレッソには硬水が合う。
コポコポとお湯が沸き、珈琲を淹れようと思ったが、カップを忘れた。カップの代わりになりそうなものが何もない。珈琲はあきらめた。
地べたに座り、車にもたれかかって空を眺めた。秋の澄み切った空気と標高の高さで、星々が明るく輝いている。何も考えず、夜空を眺める。そうそう流れ星はやってこない。国立天文台のHPでも1時間に4~5個程度と書いてあった。
ときたま、突然輝き、瞬きするくらい短い時間で、消えていく流れ星がやってくる。1時間に一度くらいは、夜空を横切るように、長い時間をかけて流れていくものもある。その時は、すっげーと声が出た。
4時間くらい空を眺めていたら、寒くて震え上が止まらなくなってきた。まだ、月は出ている。これからが、本番なのにと思ったけど、十分に感動した。立ち上がって振り返るとオリオン座が輝いていた。来て良かった。
午前2時だ。ひと眠りしてもいいが、凶悪犯が戻ってくる可能性がある。温泉もお城見学もあきらめて帰ることにした。
6時頃に家に着き、ひと眠りしようと思ったが眠れない。布団の中でもじもじしていると電話がかかってきた。
「あなたの声が聞きたくなって電話したの」これが、母以外の女性からの電話であれば、どんなに嬉しかっただろうか。母とは、2か月ぶりくらいの電話だが、息子の危機を察知する特殊能力でも持っているのだろうか。
しかし、いつもと変わらない会話になる。
「風邪、ひいてないの」、「煙草吸うのやめてよ」、「野菜食べているの」、「あんたを残して先に死ぬのが不憫で」
おいおい、3歳や4歳の息子じゃないんだ。不憫に思わなくていい。もう、いいおっさんだ。それに、あんたは、まだ、ぴんぴんしてるでしょ。
確かに、お家断絶するのが確定的になり申し訳ないが、それほど大した家系ではないだろう。思い起こせば、我が家は饅頭屋だった。小学校にあがった頃に、じーちゃんが儲からんし、疲れるし、年取ったし止めたと廃業した。
じーちゃんに餡子の仕入れに付き合わされ、法事が立て込んでいた時は、三笠(どら焼き)の皮を焼くのを手伝っていたような記憶もある。クリスマスにはでっかいオーブンでケーキも焼いていた。
そうだ、18歳でパリで修行に行きましたというようなパティシエに負けてはいない。こっちは、幼稚園からあんこを練っていたのだ。これまで、自分を見失っていた。
スイーツ好きを恥ずかしがるのはやめよう。どうどうと、一人でケーキを食べに行こう。カシオペア座に勇気をもらった。
Fin
昨日は寒かったですね。僕も見ることができませんでした。
今夜、見ることができればいいですね。
カシオペア流星群の日記読みに来ました。
人気のない山奥で見るのがいいんですね。
双子座流星群、昨夜はお部屋の窓にへばりついて外見たんですが
やっぱりだめでした。
今夜は温かい恰好して外で夜空眺めてみます。
わざわざ、読んでくださって、ありがとうございます。
本当に怖かったんです。
綺麗な星空と沖人さんのオカンに救われましたね(笑)
しかし、夜の山中は1人では怖いかも(><)
たとえ凶悪犯で無くても絡まれたりあおり運転されたらヤバイもんね。
じーちゃんに聞いたおぼろな記憶では、三笠の山にいでし月の和歌から、
満月みたいに真ん丸だからと、三笠と呼ばれるようになったとのこと。
今では、進撃の巨人のミカサの方が有名です。
三笠って、ドラ焼きのことだったんですか!ドラ焼きの袋によく三笠と書いてあるので
なんだろな?とは思っていたものの、なるほどなるほど。
そして公に出来ない本がやはり気になりますね~w
まあ、すてきな彼女に止めてと言われたらやめるけどね
オレンジ☆
心が洗われること、間違いなしです。
ルアさん
僕は、日ハムファンです。いつか、日本シリーズでお会いしましょう
ゆりかさん
ゆりかさんだけには言えません。信長公記か甲陽軍鑑と思い込んでください。
yonaさん
後で、HPで調べたら、登山口になっていました。でも、夜中から登るのかな
mさん
川場村の道の駅にはキャンピングカーが10台、乗用車も10台くらい車中泊をしていました
男でも物騒でやらないか・・・?
そもそもたぶん凶悪犯じゃない。
スイーツ好きは全然恥ずかしくないです。
好きなものは、好きでいいのだ!と思っております。
こんな大変な目にあってたのですね。人の気配がないと怖いですよね。本門寺すら怖かった私は山奥なんて行ったら泣きそうです。初めてのお菓子教室の隣にある本、何だったのでしょう?気になる・・
それより実家がお饅頭屋さんだったとは!元祖スイーツ男子だったのですね。全然恥ずかしい事じゃないですよ~。素敵♪
お母様、優しいですね。御家断絶の危機も、大名家だったら改易だったかもですが、現代なら大丈夫ですね。
流れ星見れて良かったですね(*^^*)
こんばんは~
お水とすてきのお届けです♪
随分放置しててすいませんでした(-ω-)
ちなみに最近の自分の中での一大ニュースは、
阪神の監督が矢野になったことです。
個人的には1軍監督:新庄
2軍監督:矢野
2軍コーチ:赤星
みたいなのが理想でした(*^-^*)
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いいですね・・・・^^
タバコのお値段どんどん上がってますね
禁煙してその分貯金したらめっちゃ貯まりそうですw