首飾り
- カテゴリ:30代以上
- 2018/10/04 18:18:48
小抽斗の中の襟巻と首飾り、
どちらの品も母の形見である。
誰しも形見みたいなものは、
ひとつくらいは存在するだろう。
どちらの品もよく覚えている、
母のお気に入りで出かける時にはよく着けていたから。
あまり装飾品の類は持たなかった母、
唯一の品と言ってもいいくらいだ。
小抽斗にはひとつだけ蝙蝠をかたどった取っ手がついていて、
その他の飾り金具は全て蝶をあしらってある。
上段のふたつ並んだ小抽斗のうちひとつだけが、
何故か初めから黒鉄の蝙蝠の飾り金具だった。
嫁入り道具のひとつとして持ってきたという、
見てもわかるように父の趣味ではないとすぐにわかる。
蝙蝠をかたどった金具には鍵が付いていて、
母が旅立った後はしばらく箪笥もそのままだった。
整理ではないけど父の机は良く開け閉めしていたので、
たまにどこの鍵かわからない物が入っていることなんかはよくあった。
その中でも黒鉄の蝙蝠の形をした鍵、
それがどこの鍵なのかはすぐにわかった。
そこだけはまだ開けてなかったので何気に開けてみると、
襟巻と首飾りが蔵われていた。
父が大切に鍵をかけて。
その鍵を自分の机の中にしまっておいたのだろう。
手を添えて襟巻をそっと持ち上げてみる、
上等の毛皮らしくチョットした小動物ほどの手ごたえだ。
首飾りはと言えばチェーンの代わりに小さなターコイズ、
中央には大粒のアレキサンドライトが輝いてる。
今見ても幼い日に見たのあの美しさのままである、
宝石が太陽の光に照らされて虹が見えたような気がした。
そう言えばむかし母が「虹って、一匹、二匹って数えるのょ」って、
そんなことを言ってたっけ。
「どうしてって」って聞くと蛇の仲間だからって答えで、
それでね虹にもオスとメスがあって普段はオスしか姿を見せなくて、
二重になって虹がかかる時、
薄いほうの虹は色の順番が逆になる。
それがメスなんだょってばーちゃんが言ってた。
ばーちゃんからかいって。
後からばーちゃんに聞いたら、
そんなこと教えとらんょって言ってた。
むむむ・・・・母のジョークだったのか。
今となっては謎ではあるが、
今でも私の心の中にその虹蛇さんは住んでます。
虹のお話はメルヘンチックで素敵なお母様でしたのね。
お母さまとの思い出と重なるのね。
わたしも、そろそろ~~(*^_^*)
同性としては、なんだかくすぐられる嬉しい解釈だわよね♪
虹って、気象現象というよりも、確かに有機的な生き物っぽい
存在の仕方よね。蛇の仲間と聞いて育ったブラしゃんが
それらの漢字を後付けで知った時の驚きと納得の大きさを想像しても
母上のジョーク?の深さとエスプリにうなってしまう!のであった ^ - ^
素敵だよなぁ〜