Nicotto Town



『線路は続くよ』


# 虹色飛行機雲


汽車が駅に着く

扉が開くと、雨上がりのむっとした空気が車内に流れ込む

空には、夏の雲


「あの~」

扉から、大きなてるてる坊主がのぞき込む

「はい、なんでしょう」

車内販売員が応対する

「空港行きの電車はこれでしょうか」

「はい、次の停車駅に小さな空港がありますよ」

「良かった。みなさま、この汽車にお乗り下さい。乗り遅れないように、カヘル様は、でんでん虫様を背中に乗せてあげてくださいね」

「ゲコゲコ」

「でんでんでん」

ホームをみると、たくさんのカヘル達が、それぞれでんでん虫を背中に乗せ、少しうしろの車両に乗り込むのが見える

お引っ越しかしら?


「いえ、今日はこの街が雨予報だったので、お花見にきたのですけれどね、雨が上がったら、急に気温が上がったので、次の雨に行くことになったのです」

てるてる坊主が言う

「あなたは、ガイドさん?」

みれば、お腹と背中に「カヘル様・でんでん虫様限定紫陽花お花見ツアー」と書かれている

「はい。最近はてるてる坊主にお願いする人たちも減りまして、生活のため、紫陽花航空と提携して、添乗員をしているんです」

「次の雨って、場所は分かるの?」

「てるてるネットワークを使えば、訳ないですよ。今どこで、どんな雨が降っているのかなんて、わたし達にとっては、簡単なことです」

「えっへん」と、胸を反らすてるてる坊主

「そのわりに、さっきは慌ててたみたいだけれど」

「雨は分かるのですけれどね、さすがにその後のことまでは・・・盲点でした。晴れてカンカン照りになると、カヘル様達がカンピンタンになってしまわれますからね。今後の課題です」

それで良いのか?

「それに、気になったんだけど、紫陽花航空って・・・」

「おっと、ついつい話し込んでしまいました。あまりお客様をお待たせするわけにも行かないので、私はこれで失礼します」

てるてる坊主が慌てたように、カヘル達のもとへ戻って行く


やがて発車のベルが鳴り、汽車がホームを出る

窓の外は夏の空

くっきりと、淡い虹がかかる

それは、紫陽花航空の飛行機雲なのかもしれない


つづく



(#^.^#)







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