『線路は続くよ』
- カテゴリ:30代以上
- 2018/06/26 10:12:03
# 虹色飛行機雲
汽車が駅に着く
扉が開くと、雨上がりのむっとした空気が車内に流れ込む
空には、夏の雲
「あの~」
扉から、大きなてるてる坊主がのぞき込む
「はい、なんでしょう」
車内販売員が応対する
「空港行きの電車はこれでしょうか」
「はい、次の停車駅に小さな空港がありますよ」
「良かった。みなさま、この汽車にお乗り下さい。乗り遅れないように、カヘル様は、でんでん虫様を背中に乗せてあげてくださいね」
「ゲコゲコ」
「でんでんでん」
ホームをみると、たくさんのカヘル達が、それぞれでんでん虫を背中に乗せ、少しうしろの車両に乗り込むのが見える
お引っ越しかしら?
「いえ、今日はこの街が雨予報だったので、お花見にきたのですけれどね、雨が上がったら、急に気温が上がったので、次の雨に行くことになったのです」
てるてる坊主が言う
「あなたは、ガイドさん?」
みれば、お腹と背中に「カヘル様・でんでん虫様限定紫陽花お花見ツアー」と書かれている
「はい。最近はてるてる坊主にお願いする人たちも減りまして、生活のため、紫陽花航空と提携して、添乗員をしているんです」
「次の雨って、場所は分かるの?」
「てるてるネットワークを使えば、訳ないですよ。今どこで、どんな雨が降っているのかなんて、わたし達にとっては、簡単なことです」
「えっへん」と、胸を反らすてるてる坊主
「そのわりに、さっきは慌ててたみたいだけれど」
「雨は分かるのですけれどね、さすがにその後のことまでは・・・盲点でした。晴れてカンカン照りになると、カヘル様達がカンピンタンになってしまわれますからね。今後の課題です」
それで良いのか?
「それに、気になったんだけど、紫陽花航空って・・・」
「おっと、ついつい話し込んでしまいました。あまりお客様をお待たせするわけにも行かないので、私はこれで失礼します」
てるてる坊主が慌てたように、カヘル達のもとへ戻って行く
やがて発車のベルが鳴り、汽車がホームを出る
窓の外は夏の空
くっきりと、淡い虹がかかる
それは、紫陽花航空の飛行機雲なのかもしれない
つづく
(#^.^#)