夏の景色
- カテゴリ:30代以上
- 2018/06/13 20:05:29
以前に見た。
ロウソクの炎を見た時、そう思った。
懐かしいと同時に胸がいっぱいになる、そんな炎だった。
わたしが、わたしでいる以前。
ずっとずっと昔。
同じようにその炎を見て、同じように感じていた。
お寺の本堂の中には、たくさんの人で混みあっていた。
四方を山で囲まれたこの場所は、
夏になると、とてつも暑くなる。
タオルを手にしたまま、何度も顔の汗をふいた。
日陰を探しながら歩く癖がついた。
地面に映る影が、濃くはっきりしている。
その暑さの中をたくさんの人たちが、
亡くなった人たちのためにロウソクに火を灯していた。
何百と揺れる炎。
時間の経過とともに溶けていく白いロウソク。
そこに書かれたいくつもの文字。
亡くなった人に家族の健康を願う言葉。
ありがとうと感謝する言葉。
亡くなった人の名前。
その炎を見ていると時間や生命といったものが、
一瞬のもののように思えた。
はかない、と思った。
苦しみも悲しみも楽しみも、
取るに足らないものなのかもしれない。
思いを言葉にしなくてすむ、
空間に流れる空気だけで呑み込んだ言葉がわかる。
抱いた思いを受け止めてくれる、
それだけであふれそうになった涙はかわいていく。
感じたこと考えたことは、そう、わからない。
だけど、どう感じたとしても私たちはここで生きている。
この風景が、もうすぐやって来る。
また、私は足をはこぶことだろう。
生かされているって、改めてその守護に感謝。
毎日手を合わせているけれど、お盆の期間は
より近くに感じ、深い、よね。
ロウソクを灯しながら心で呟く
「今年も来ましたよ」手を合わす。
また来ます。
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』