Nicotto Town



プチ迷子という危ない遊び

元はと言えば毎日毎日たいくつな通勤路に嫌気がさしてたんだ。

仕事で理不尽な案件が積もり積もっても毎日毎日この道を通って社畜として振る舞う。
いつしかこの道が嫌いになってしまってね。
たまには違う曲がり角を曲がってみようじゃないかと。

(中略)

どの曲がり角を曲がっても全部嫌いな道になってしまってね。
こうなると多少遠回りをしてでも道を変えなくちゃと。

(中略)

もうこの会社近辺の全ての道が嫌いになってしまってね。
こうなればもう次は「一駅前で降りる」とか「一駅乗り過ごして会社を目指す」とか段々エスカレートしてしまうわけ。
もはや列車ではなくバスで全くわけのわかんない停留所からノーヒントで歩いて始業時間までに会社を目指すとかね。

すると男ってのは幾つになっても冒険少年の心を持ってるんだろうね。
わけのわかんない場所から雰囲気だけで会社を目指すいつしか芽生えた妙なワクワク感と、あれほど嫌気がさしていた会社近辺の道にたどり着いた時の安心感やら達成感やら。
会社が見えた時の小さく拳を握ってグッとする時、社畜の一日は始まる。

国語の教科書でおなじみ杉みき子の短編集「小さな街の風景」にありそうなお話。

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