Nicotto Town



『線路は続くよ』

#はるのおとずれ



汽車が駅に着く

扉が開くと、暖かな空気が車内に流れ込む

この街にも、遅い春が訪れたのだろう

改札口の向こうには、たくさんの人

その上には「春の訪れ祭り開催中」の横断幕

人垣の中にいるのは、春の妖精だろうか


人は皆、春祭りに行ってしまったのか、ホームはしんと静まりかえっている

駅員さんも、売店の店員も、誰もいない

そんなホームの片隅のベンチに、少年がひとり、寂しげに座っている

汽車を待っているのだろうか

人垣から、ひとりの少女が少年を見つけ、近寄る


「何こんなところでしょぼくれてるの?」

少女が声をかける

「なんだ、お前か」

振り向いて、少年が言う

「なんだって何よ」

頬を膨らませる少女、続けて

「あなたはお別れの挨拶行かないの?」

「僕は北風、みんなの嫌われ者だぜ。行ったところで、イヤな思いをさせるだけさ」

少女から顔を背け、少年が言う

「そんなことはないと思うけど?」

「あるんだよ!」

「そうかな~。だってあなたは本当は優しくて素直な人じゃない」

「・・・・・・」

「北風に追われて凍えて家路を急ぐ人を見送る時の、ごめんなさいの目。北が銭魔負けないように、しっかりと手をつないで寄り添う恋人達を見守る優しい目」

「・・・・・・」

「ね。本当のあなたを知れば、きっとみんなあなたのことを好きになるわ」

「そんなことで北風を好きになるやつがいたら、笑っちゃうね!」

怒ったような顔で言う少年に、少女は微笑み、そっと寄り添う

「じゃあ、笑って」


やがて、発車のベルが鳴り、汽車がホームを出る

汽車は、移ろいゆく季節の中を走り続ける


つづく



(#^.^#)













アバター
2018/04/29 22:35
今晩は~♪

いつもの大好きな~「線路がつづくよ」シリーズですね^^

いつも~ほっこりする…こころ温まるお話で~
本当にホッ~З…とします^^
「春の訪れ祭り」で、皆が、浮かれている所に
1人寂しげにしている…少年…それが「北風さん」って
ちょっとドキッとしました^^
そう~私も春の訪れで、浮かれてw、北風さんの事は、忘れてました~^^
(と言うか…気温の高低差の激しさで、喜ぶ暇も無いですが…w)

それを慰めているのは「春の妖精さん」か、「春風さん」かな?^^
優しいですね^^キット可愛い女性なんだろうな~^^
など勝手に想像して楽しみました^^いつもありがとう^^

私の思いこみかもですが…
私が、落ち込んだり、怒ったりした時にいつも
慰める様に書いてくださってありがとう^^
優しい~ゆ様に、いつも感謝しています^^

「ゆとり教育」の件は、ごめんなさい~
子供の事になると~我を忘れてしまうので…
キツイ言い方になってしまって、本当に申し訳ございません~
m(_ _)m

アバター
2018/04/29 16:32
ステキな物語ですね(#^.^#)



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