Nicotto Town


ごま塩ニシン


夜霧の巷(4)

 夜霧の中へ帰っていった信太盛太郎がテレビニュースで報道されていた溺死人物なのかどうか、美佐は判断に迷っていた。可能性があるかもしれないという不安もあるが、最悪のケースは想定したくなかった。結局、雪枝に余計な心配をかけることになっても、よくないので不確定なことを話題にするべきではないと、美佐は結論付けた。これが正直な美佐の気持ちであった。
 病院を出て、美佐は店用の食材を仕入れるために業務スーパー清宮水産に寄った。注文品をメモして渡しておくと、1時間後には届けてくれる。この店と雪枝が契約していたから、ママのやり方を美佐は踏襲している。常連客が多いので新鮮な食材が勝負になってくる。信頼のおける専門店で仕入れる。オーナーである雪枝の経営感覚がこうしたところに現れていた。客へのもてなしには細心の心遣いをしなさい、というのが雪枝の口やかましい方針で、誠意をもって仕事をしていたら、客は必ず分かってくれる。これがママの口癖であった。
 レジャービルの入り口で郵便ポストを覗いていると、不意に二人の男が美佐の近くに接近してきた。アッという間、若い男と中年の男性に挟まれた。
「なにか。」
 戸惑いながらも、お腹を引き締めて美佐は向き直った。
「突然に申し訳ないですが、北川美沙さんですか。」
 若い男は警察手帳を見せた。二宮健次という名前が美佐の目の中で揺れた。美佐はとっさに声が出なかった。制服を着た警察官が巡回で来るのは年に何回かあるので驚かないが、私服刑事というのは初めてであった。店に勤めるようになってから、レジャービル内で事件らしい出来事に遭遇していなかった。入居しているテナントが長年、営業しているので出入りする客層も安定していた。
「今日のテレビでご存知かと思いますが、写真に写っている、この方が昨夜、店を出られたのは何時頃でしたか。」
 美佐は一枚の写真を見せられた。そこには店を出た初老の男を見送る美佐の姿が写っていた。刑事は早くからレジャービルに来て、ビルの防犯カメラの写真を警備会社から手に入れていた。プロの裏付け捜査の手際の良さを美佐は感じた。
「地下鉄の最終に間に合うようにと、雨の中、急いで帰られました。」
 写真には23:30と時刻まで印字されていた。

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2018/04/03 06:21
何?美佐は疑われてるわけ?(笑い

そうだ、AIを使う最初は、県警だぜ。



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