Nicotto Town



『線路は続くよ』

# 雪だるま幻想



 「今日は楽しかったね」

 「うん。電車が来る度に、みんなわたし達を見てはしゃいでたわ」

 「あしたもまた、楽しい日になると良いなあ」

 「無理よ。あしたにはきっと・・・」

 「そうだね。でも、一度で良いから、電車にも乗ってみたかったなあ」

 「そうね・・・」


汽車が駅に着く

真夜中の無人駅

小さな駅舎と小さなホーム

雪かきをされたホームの端では、雪山と、溶けかけた雪だるまが二つ並んで

街灯だけが灯る街で、汽車を迎えていた


「この汽車にお乗りですか?」

ホームに降りた車内販売員が、雪だるまに話し掛ける

「いいえ、ちがいますよ」

「わたし達、あしたには消えてしまいますしね」

少し寂しそうに笑って、雪だるま達が言う

「あら、でも、切符をお持ちのようですけれど?」

販売員が言う

「え?」

「何処に?」

雪だるま達は、きょろきょろと目だけ動かす

「ほら、ここですよ」

販売員が、雪だるまの胸のあたりを指さして言う

「う~ん、見えない・・・」

「手が届きません・・・」

雪だるまなので、動くことが出来ないようです


「はい、これですよ」

販売員が、雪だるま達の胸から切符をとり、その手に渡す

「渡されても・・・」

「わたし達は雪だるまだから手も動かな・・・あら、動いたわ」

雪だるま達は、驚いたように自分の手を見、さらに首をきょろきょろと動かす

「動いた!」

今度は、ぴょんぴょんと跳ねてみた

「動くわ!」


頭の上に、びっくりマークとはてなマークが浮かぶ雪だるまに微笑みかけながら、車内販売員が言う

「この汽車にお乗りですか?」


「もちろん!」

「もちろんよ♪」

仲良く手をつないで、雪マークのついた車両に向かう雪だるま達


やがて、少しだけ明るくなりかけた空に、発車のベルが鳴り響く


汽車は走り続ける

次は、どんな景色に出会えるのだろう



つづく


(#^.^#)













アバター
2018/01/15 10:04
えりすさん

いつもありがとう♪

冷凍車両・・・
鋭いですね
実は、最初
『その雪マークのついた、冷凍車にお乗り下さい』
と言う文があったのですよ
でも
冷凍車つて、クール宅急便みたい
と、セルフ突っ込みが入ったので
その部分を消して、ぼかしました

(#^.^#)
アバター
2018/01/14 16:28
今日は~♪

大好きな「線路が続くよ」シリーズですね^^
雪だるまさんが、
一生懸命動く姿が、想像出来て、可愛い~^^

冬だけの短い命の雪だるまさん、
子供の頃、溶けていく雪だるまさんを、観て悲しくなったのを思い出します。
滅多に雪が、積もらない所出身の私は、
「小さな~雪だるまさん助ける為に、冷蔵庫に入れよう」として…
母に激怒された思い出もある~w
皆考える事は、同じなのか、そう言う、お話も子供時代からよくありますよね^^

きっと愛のある素敵なこの列車は、冷凍室ならぬ…冷凍車両もあって、
彼らは、目的地まで無事に行ける様な気がします^^
え?そんなの無い?w




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