荒巻義雄の『白き日 旅立てば不死』
- カテゴリ:小説/詩
- 2017/12/10 22:49:01
年配のSF読みならご存じの名前でしょう。
大ヒットした架空戦記シリーズは全く読んでおりません。ゴメンナサイ。
ですがデビュー直後の荒巻、文字通りクラクラする幻想SFばかり。
……といっても『大いなる正午』『柔らかい時計』、
『ある晴れた日のウィーンは森の中にたたずむ』と、これを長編化した
『白き日 旅立てば不死』くらいしか読んでないけど、どれも忘れられない。
『白き日 旅立てば不死』を紹介しておきましょう。
ヨーロッパのカジノを転々としてルーレットで暮らす高等遊民的主人公が、
若い娼婦と知り合い、身請けの金を稼ごうとするのだが……。
これ以上書くのはルール違反。印象的な固有名詞を羅列してみましょう。
サド、TEE(ヨーロッパ横断特急)、ヴァレリー、プルースト、
シャルトル(フランスの都市)、ツェノンの逆理(アキレスと亀)、……。
欧州かぶれの私のスノビズムを存分に刺激してくださるんです。
話の内容も凄い。幻想譚ですから虚と実が入り乱れるわけですが、
レムの『枯草熱』終盤を先取りしてるような極上の酩酊感を味わえる。
荒巻もレムも(一応)合理的な結末をつけて結んでるんですけど、
実はそこはどうでもよい(解釈の一例に過ぎない)点も似ているなー。
驚くべき長編です。オールドファンの多くが同意してくださるでしょう。
タイトルも絶妙です。正に『白き日』『旅立てば』『不死』なんです。
ワケ分からないですか? 分かっちゃったら幻想譚じゃありません。
ブルトンも言ってます。『驚くべきものは すべて 美しい』と。
荒巻は北海道出身でしたっけ。なぜか新巻鮭を連想してしまうなー。
訃報で思い出す作家ってありますよねー。でも自分の中で、
追悼フェアに足を向けるのは悔しい気がしちゃうんですよ。荒巻の初期はお勧めします。
道内出身作家で、私のバイトしてた書店にも自分の本が並べられているのをお付きの人と一緒に見に来ていたという思い出が。あるにもかわらず読んでない(笑)
沈黙の艦隊なら読んだんだけどなあ…全然覚えてないけど…