『線路は続くよ』
- カテゴリ:30代以上
- 2017/06/30 09:24:57
# 夏の幻影
汽車が駅に着く
扉が開くと、暑い空気が車内に流れ込む
ホームの向こうは、揺らめく夏色の街
華やいだ恰好の人たちが、通りを行き来する
陽炎だろうか
「すみません」
声の方に目をやると、先ほどまでベンチに座っていた二人連れが。扉の前に立っている
「この汽車にお乗りですが?」
車内販売員が扉の前で応対する
「いえ、そうではなくて、アイスクリームが売っていないかと思いまして」
男の人が言う
「この駅のホーム、売店がないんですもの」
これは女の人
「ええ、ありますよ。この街へはご旅行ですか」
ワゴンからアイスクリームを取り出しながら、販売員が言う
「いえ、僕は雪だるまを探しに来たんです。夏にすむ雪だるま、をね」
「雪だるま、ですか?」
「ええ。夏にも雪だるまはいるのです。子供の頃、確かに見た、はずなんだ」
「この人ったらそればっかり。夏に雪だるまなんてあるはずないのに。まあ、わたしは旅行できるから、べつに良いんですけどね」
いたずらっぽく笑いながら、女の人が言う
「見つかると良いですね」
おつりをわたしながら、販売員が言う
おつりとアイスを受け取り、二人は、向かいのホームの電車へと向かう
「ねえ、次はどこへ行くの?」
「海へ行こうかと思ってるんだ。僕が雪だるまを見たのは、海だったのかもしれない」
「ふうん。そんなことよりさ、海へ行くのなら、新しい水着欲しいな。買っても良いでしょ」
二人が乗り込むと、発車のベルガなり、向かいのホームの電車は駅をでて行く
この汽車も、そろそろ発車の時刻だ
「まもなく発車致します。急いで下さい」
ホームに向かって、車内販売員が言う。
陽炎の立つホームでは、二つの丸い影が、汽車へと急いでいた
それは
夏傘を差した、雪だるまだった
あの二人も、もう少し待っていたら、雪だるまに逢えたのに
「きっと、逢えなかったと思いますよ」
汽車は走り続ける
次は、どんな景色に出会えるのだろう
つづく
(#^.^#)
この季節に爽やかになれるお話でしたね。
いいなぁ。
久し振りの「線路はつづくよ」ですね^^
大好きです~^^
今度は、夏色の街ですか…
リゾート感のある街なのかな~?
海もそろそろ近づいて来たのかな~?なんて…思いながら…
読ませて頂いてました^^
イメージは、前に行かれた…沖縄ですか?
違ったらごめんなさい。
雪だるまさん~2人(?)…
夏の街で、どうやって暮らしていたのかな?
お家が、巨大冷蔵庫だったのかな?w
日傘を、差して…たぶん焦って汽車(こちらの汽車かな?)に乗る…
可愛い姿を、想像して…クスっと笑ってしまいました~^^