Nicotto Town



『線路は続くよ』

# 夏の幻影



汽車が駅に着く

扉が開くと、暑い空気が車内に流れ込む

ホームの向こうは、揺らめく夏色の街

華やいだ恰好の人たちが、通りを行き来する

陽炎だろうか


「すみません」

声の方に目をやると、先ほどまでベンチに座っていた二人連れが。扉の前に立っている

「この汽車にお乗りですが?」

車内販売員が扉の前で応対する

「いえ、そうではなくて、アイスクリームが売っていないかと思いまして」

男の人が言う

「この駅のホーム、売店がないんですもの」

これは女の人

「ええ、ありますよ。この街へはご旅行ですか」

ワゴンからアイスクリームを取り出しながら、販売員が言う

「いえ、僕は雪だるまを探しに来たんです。夏にすむ雪だるま、をね」

「雪だるま、ですか?」

「ええ。夏にも雪だるまはいるのです。子供の頃、確かに見た、はずなんだ」

「この人ったらそればっかり。夏に雪だるまなんてあるはずないのに。まあ、わたしは旅行できるから、べつに良いんですけどね」

いたずらっぽく笑いながら、女の人が言う

「見つかると良いですね」

おつりをわたしながら、販売員が言う


おつりとアイスを受け取り、二人は、向かいのホームの電車へと向かう

「ねえ、次はどこへ行くの?」

「海へ行こうかと思ってるんだ。僕が雪だるまを見たのは、海だったのかもしれない」

「ふうん。そんなことよりさ、海へ行くのなら、新しい水着欲しいな。買っても良いでしょ」


二人が乗り込むと、発車のベルガなり、向かいのホームの電車は駅をでて行く

この汽車も、そろそろ発車の時刻だ


「まもなく発車致します。急いで下さい」

ホームに向かって、車内販売員が言う。

陽炎の立つホームでは、二つの丸い影が、汽車へと急いでいた

それは

夏傘を差した、雪だるまだった

あの二人も、もう少し待っていたら、雪だるまに逢えたのに

「きっと、逢えなかったと思いますよ」


汽車は走り続ける

次は、どんな景色に出会えるのだろう



つづく


(#^.^#)












アバター
2017/07/04 00:06
夏の中でも溶けない雪があったなら、夏の中にも雪だるまさんがいれますね(*´▽`*)
この季節に爽やかになれるお話でしたね。
いいなぁ。
アバター
2017/06/30 13:38
今日は~♪

久し振りの「線路はつづくよ」ですね^^
大好きです~^^

今度は、夏色の街ですか…
リゾート感のある街なのかな~?
海もそろそろ近づいて来たのかな~?なんて…思いながら…
読ませて頂いてました^^

イメージは、前に行かれた…沖縄ですか?
違ったらごめんなさい。

雪だるまさん~2人(?)…
夏の街で、どうやって暮らしていたのかな?
お家が、巨大冷蔵庫だったのかな?w
日傘を、差して…たぶん焦って汽車(こちらの汽車かな?)に乗る…
可愛い姿を、想像して…クスっと笑ってしまいました~^^



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