追悼 アラン・ホールズワース
- カテゴリ:音楽
- 2017/05/23 10:09:27
二十世紀のエレクトリック・テクニカル・ギター奏者として、
おそらくは頂点を極めたアラン・ホールズワースが先月の半ば、
70歳で亡くなっていたことを先ほど知りました。仕事してる場合じゃねえや。
フュージョン、メタル、プログレ、ハイパージャズ問わず、
この人の技術と音色に影響を受けてないギタリストは皆無です。
では偉大な音楽家だったか?というと……流石にそこには疑問符がつく。
ですが、サックスの音色でコルトレーン的なインプロヴァイズを展開し、
和声的にはピアニスト、特にビル・エバンス的なハーモニーを志向した。
この偉業を受け継ぐ人はほとんどおらず、技術の継承のみに留まっている。
ソロではトーナリティに対する感性がとにかく独特、唯一無二。
いわゆる「アウト系」プレイヤーとも異なる「ファーラウェイ」である。
コードプログレッションに間違いなく則っており、「フリー」にはいかない。
この人の演奏を始めて聞いたのは75年前後だったはず。
後期ソフト・マシーンの『バンドレス』です。もう止めてくれといいたくなる、
壮絶なトコロテンフレーズの洪水にあっけにとられたものでした。
ゴードン・ベックとのデュオアルバム聴いて、全てを諦めた。
アコギで演ってる『ディミニッシュド・レスポンシビリティ』って曲、
永遠に解決しない問題を音にしたらこうなった、みたいな壮絶さ。
フリー系のドラマー、ジョン・スティーブンスとも演ってますが、
やはり「フリー」にはならない。頭の中で調性を意識してる弾き方。
頭の中で鳴っている物を具現化するためにギター弾いてる。脱帽です。
超絶技巧の演奏者は今後も山のように出てくると思うんですが、
私にとってホールズワースは別格でした。真のイノヴェイターだった。
だから売れなかった。うーん……そういうもんだと思います。
何が凄いか? ……どうだろう、『音楽』の範疇で語るとダメだろうなー。
ギターミュージックの文脈で聴き、評価するしかないでしょう。
以下、お気に入りをあげておきましょう。万が一興味があれば。
1.ハザード・プロフィール・パート1(ソフト・マシーン『収束』)
これはライブ映像が見られますね。まあ一度見てください。アホです。
そのあとでスタジオ盤聴いてもいいかな。彼の基本はこのあたりです。
2.ロード・ゲームス(同タイトル)
この人で一番売れたミニアルバムのタイトル曲、ヴァンヘイレンの口利き。
できれば東京のライブ演奏が宜しい。Aの曲でソロをFから始めるんですよ。
3.エクスプレッソ(ゴング『ゲイズユース』)
マシーン参加後だったはず。滑らかなフレージングの開始期。
ちなみにホールズワース、フルピッキングでも光より速いと思う。
4.フォイアーズ・オブ・ファン(テンペスト『テンペスト』)
マシーンより前。ライブ音源ではあのオリー・ハルソールとツインギター。
銀河系最強のツートップだと思います。ロックらしさが強い曲。
5.シングス・ユー・シー(ソロアルバム)
ホールズワースの代名詞的な曲。異常な和声感覚が堪能できるはず。
評判の悪い1stソロアルバムで自分で歌ってるテイクが好きです。
決定。今日は仕事しない。ギター持ってスタジオいってきます。
迂闊にも訃報をひと月くらい知らなかったです。ファン失格。
ホールズワースをもし買うのなら、スタンダードばかりやった『None too soon』がお勧めです。
ザッパとマイルスから声がかかったけど、「自分の曲できないからイヤ」って断った頑固者でもありました。
その、メタル・ファティーグ1曲め、オマージュなのだと思うのですが、フランク・ザッパの「Them or Us」にそっくり。
わたしはネットラジオの放送で、放送をやっているニコ友さんのお部屋でアラン・ホールズワースの訃報を知りました。
ユースケ様知っておられるかと思ったんですよ~。