Nicotto Town



ロックンロールの創造主 永遠なり


ジャズ発明者に諸説あるように、ロックンロールの始祖を決めるのも困難。
初期のプレスリーもジェリー・ルイスもアポロ劇場も無視できない。
でも「ロック生みの親」を名乗ってよかったのはチャック・ベリーただ一人だ。

私は60年代に音楽を聴き始めているので、生の衝撃を知らなかった。
まずはビートルズのカバーで彼の存在を知った。原曲を聴いた。
ビートルズのほうがいいと思った。そんなものです、初めの頃は。

ストーンズのドキュメント映画、御大との共演のリハのシーン。
有名なフレーズを御大がやり、キースが真似る。即座にダメ出しされる。
延々とやる。うーむ、確かに違う。ここまでマジに悩むキースは珍しい。

ジャズのビッグバンドやブルース志向からエンターテイメント系バンドを聴く。
スクリーミングJホーキンス、キャブ・キャロウェイ等。凄い動きである。
大衆芸能を支えた彼らの一角に御大の動きも位置づけられると思うようになる。

生を見たのは90年代であったか。お目当ては他のビッグネームだった。
だが「チャックベリーソング」だけを演ると宣う御大の独裁制が凄かった。
何だろう。白人によってソフィスティケートされる前の生のロックを感じた。

90年代後半、某誌に灰野敬二のインタビューが載り、今よく聴くのが
チャックベリーの海賊版だという。うーん、何か分かる気がした。
真似て一枚買ってみた。……これと市井の完全即興音楽、そう遠くない。

ギター弾きだからフレーズをパクる。だが本気の模倣は私には無理だった。
譜面もテンポもダイナミクスも高度だが、決定的なのは『血』ではないか。
結局諦めた。ギャラ出る仕事で御大の曲演るとき、イントロは他人任せ。

御大はジャズ的フレージングも上手い。やはりジャズって黒人音楽だ。
プレスリーのバックバンドと比較すれば違いは明らかであろう。
彼らがマイノリティだった頃の記憶がジャラジャラ響いているのかも知れぬ。

金に貪欲かつ汚く、しょっちゅうギャラで揉めたという話が引用される。
デレク・ベイリーが日本を前衛巨大市場と見做し利用した逸話を思い出す。
愛や平和を歌ってないのである。こういう点も信頼に値する。

小柄で傲慢な点はマイルスを彷彿とさせる。小男の巨神幻想なのか。
ロックの創造主は布教ばかりやって派閥を作らなかった。信奉者ばかり。
嫌なヤツだったのだろう。大工の息子もそうだったのかもしれない。

デビュー曲の『メイベリーン』、あとは『ジョニーBグッド』。
ジョニーBグッドの精神性を真似たロックの名曲はどれだけあるのか。
チェ・ゲバラと御大の違いは何か。御大の信奉者は国なんぞ作らないだろう。

ロックンロール→ロックの流れに偉大な要素があるとするならば、
それを創り上げた功績はチャック・ベリーただ一人に帰結させてよい。
プリンスもマイケルも凄いミュージシャンだったが、御大には叶わない。

チャック・ベリー・ソングを受け入れない人がいて宜しい。
ガキはイイ車を手に入れて女くどいて全ての大人に逆らうだけの存在だ。
ロックンロールってそういうものだと私は教わった。心より哀悼の意を表す。




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