Nicotto Town


ごま塩ニシン


脳活日誌705号

   「地獄の道づれ」を読む。
 読書会の友人から奥山和子「地獄の道づれ」(2017年1月15日初版・静岡新聞社)を借りて読んだ。友人は著者と同じ「日通文学」、「全作家」の同人で著者からサイン入りの本を謹呈され、小生に読んでみないかと貸してくれた。読書会では中勘助の「銀の匙」を読んでいるが、作家である中勘助の人となりについては何も知らなかった。奥山氏は静岡市立中勘助文学記念館の事業に長年携わってこられた方で、幼少の頃に中勘助にも出会われていることから、この小説は宿命的な作品なのかもしれない。

 勘助には兄がいて、この兄との葛藤の生涯だった。「地獄の道づれ」という小説を読んで、初めて知った。勘助の兄は金一といって東大医学部、恩賜の銀時計を貰った秀才であった。勘助が一高に入学した明治35年に兄の金一は結婚した。金一は妻を残して単身ドイツに留学、帰国後は九州帝国大学の助教授という前途洋々たる人生であった。明治42年金一は九大の医学部教授になっていたが、弟の勘助は東大を卒業することになって、この祝いを兼ね、親戚の者達と酒を酌み交わし、金一は得意の絶頂にいた。翌日、来客があって金一は起こされたが、この時、金一の体は異常をきたしていた。半身不随、脳に障害のある失語症となったのである。

 これからが詩人であり作家である勘助と兄の金一、金一の妻末子の三人による「地獄の道づれ」が始まるのであるが、作家奥山和子氏は金一の立場、妻末子の立場、この二者の視点から勘助の内心を描くというユニークな作風になっている。失語症を患った兄金一から見た勘助の内面の描き方に新鮮さを感じた。是非、推薦したい作品である。

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2017/01/31 20:39
ごま塩ニシンさん、こんばんは。

私、その小説初めて知りました。
神さまは乗り越えられない試練は課さない、といわれますけれど、それでもそれはあまりにも、と思うことがあります。
考えさせられますね・・・



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