Nicotto Town



「線路は続くよ」


# 虹のありか



「おや?珍しく先客がいるな」

高台の公園に作られた駅

そのホームの隣に作られた展望台の上で、青年はつぶやく

展望台の隅に置かれたベンチ

テーブルの上に一匹の猫

「君はどこから来たんだい?」


早朝のホームには、汽車が止まっている

「もしかして、あの汽車に乗ってきたのかな?」

「にゃあ」

仔猫が青年に振り向き、答える

「そんなわけないか」

手すりにもたれながら、独り言のように青年は言う


手すりの向こうは、朝の風景

一面の花畑が、朝露に輝いている

その向こうには、朝靄に霞む木々と、遠くに見える街が、やっぱり霞んで見える

遙か向こうで青くきらめくのは、海だろうか


「今日は出ていないな」

「にゃ?」

「虹さ。この丘にかかる虹は、それは綺麗なんだぜ」

「にゃ」

「この上からでも届かない、遠い空にかかる虹。、翼を持たないこの身では、見上げることしか出来ないけどね」

「にゃ~」

「遠い遠い街にあるという、空までそびえる塔の上からなら届くかもしれないな。君、見たことがあるかい」

「にゃにゃ」

「あの汽車に乗ったら、いけるだろうか。一緒にこっそり乗ってみないかい」

「にゃあ」



「朝から仔猫を相手になにバカなことを言ってるの」

声に振り返ると、ひとりの少女が青年を睨みつけていた

「良くここにいるとわかったね」

「夜明け前に少しだけ雨が降ったでしょ。だからきっと虹を見に来てると思ったのよ」

「虹は出てなかったよ。代わりに、小さなお仲間に会えたけどね」

「にゃ」

返事をするように仔猫が鳴く

「あら、お利口な猫ちゃんね。朝から変な人につきあってくれてありがとね」

仔猫をなでながら少女が言う


「ほら、もうお仕事に行く時間よ。折角迎えに行ったのにいないんだもの。今日は朝ご飯抜きね」

「それはひどくないかい」

「自業自得よ」


いたずらっぽく笑いながら言う少女を追いかけて、青年が展望台を降りた時、駅のホームから、車内販売員が仔猫に声をかける

「そろそろ発車の時刻ですよ」

「は~い、今行きま~す」


展望台を降りる時、ふと、二人の去った方に目をやる

朝日をうけて何処までも続くお花畑

その間を縫うように作られた散歩道

回転式の水撒き機が作り出した虹の中

笑う少女と、少女が作ったのだろうサンドウィッチを頬張る青年の姿が見えた


汽車は走り続ける

次は、どんな風景が待っているのだろう



つづく






















アバター
2017/01/11 16:49
めぷちん♪さん

いつもありがとう

海のお話
実は、大まかには出来ているのです
ただ
何かひとつ足りない気がして、形にはしていません
今しばらく、お待ちください

(#^.^#)
アバター
2017/01/10 14:04
今日は~♪

面白い~^^
ネコちゃん~子猫ちゃんだったのね…
そして…最後に「しゃべるんか~い~w」と思わず突っ込んでしまいました~w

一面のお花畑のある町~ステキな町ですね^^
住んでみたいです。
そして…海も近づいて来たのでしょうか…。
ヒトデさんが、喜ぶよね^^(ヒトデさんが海に行きたがっていなかったっけ?)






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