『はみだしっ子』の名言を思い出す
- カテゴリ:マンガ
- 2016/12/29 07:47:08
三原順『はみだしっ子』を心のバイブルの一冊に並べてる人は私と同世代かな。
ふとした瞬間に彼らの葛藤から発された名言の数々を思い出します。
以前も書いたけど、私はダントツでアンジーが好きです。次はサーニンだな。
職場の過酷さに焦点を当てる報道が今年はとみに増えた。これに引っかかりを感じる。
善良なる一般大衆を代表してくださるマスメディア様が生贄の羊をあちこちから探す。
社会と従業員と企業の三位一体型発展を旗印に挙げる優良企業も追従している。
ある店で流れたアナウンスに顔を顰めた。うわべだけ聞けば歓迎すべき内容だが。
「従業員のワークライフバランス向上のため元日は全館休業日といたします」
「お客様にはご迷惑をおかけいたしますが……」云々。何度も流れる。掲示もある。
元日営業が正常ではないとようやく認識したというのか。その自覚は皆無だろう。
暗然とした気分の脳内でアンジーの姿が蘇る。マックスの頭をはたいてから一言。
「あーあー、飛行機って一機落ちるとほかのも全部点検されるんだよなー」
人類の危機管理なんてその程度。このセリフから40年、本質は変わっていない。
整備士たちは落ちた一機を呪いながら、うんざり顔でおざなりな点検に励むのです。
アンジーが非難しているのは落ちた一機だけでなく、そうしたシステム全体なんです。
銀行のATMに並ぶ。年末でみな忙しい。焦る気持ちは行列に反映する。
不必要なまでに背後から接近し、前の人との僅かな隙間を埋めさせようとする。
またアンジーの声が聞こえてくる。そのころ彼はまだ脚が不自由だった。
「走れば間に合う乗り物に乗ろうとする奴らばかりだろ?
俺は一本遅らせて、その間にいろんなもの眺めたり、
女の子とお近づきになることにするよ」
うろ覚えなので怪しいが、これまた素晴らしい。真似させていただこう。
列を整然と並べるための薄いリボンをまたぎ越え、列から去ることにします。
水清ければ魚住まずという。清く正しい水質を好まない雑魚は下流に流れよう。
グレアムも佳い台詞ばかり言うんですが、なにせ重すぎるんですよね。
「眠りを必要とする人に睡眠が必要なように、死を必要とする人には……」とか。
なぜ生きるかに向き合うグレアム、如何に生きるかあがくアンジーという対比も可能。
アンジーという名前は、母が戯れに呼んだ「私の天使(アンジュ)」から付いた。
彼は天使たらんとして生き、母との決別後もその一面を保っていたと思う。
フリル満載の服を見事に着こなすアンジーも五十歳か。どうしてるのかなー。
明智抄ですと、屈折した感性が存分に味わえる暗殺コメディ(?)『始末人』シリーズもお勧めです。
テレビ時代劇の必殺仕事人のパロディのようにみえて、登場人物の自分との向き合い方がサイコドラマ。
この人の日常エッセイも物凄い『闇と業』を感じさせる、純文学との境界領域的作品で大好きです。
読んだことはありませんでした。
明智抄・・・懐かしいけれどやはり読んでいませんでしたw
『はみだしっ子』って、少女マンガ界のエヴァなんですよね、ある世代のある人種にとって。
この作品以降、少女マンガを冷静(客観的)にしか読めなくなったという人が複数いるみたいです。
白泉社出身の明智抄という人が一種似た作風です。SFの『サンプル・キティ』『砂漠に吹く風』はお勧めです。
図書館に愛蔵版が所蔵されているのですが、
あまりにも重いので、わたしは1巻で挫折しました。
まんがのほうが活字本よりもわたしはエネルギーがいるからかも。
そうそう、なにげなくあのまんがにはそういういい台詞が多いのですよね。