Nicotto Town



フリーミュージックと総括される音について


フリーミュージックって何? アバンギャルド? テクノイズ? ポストフリー?
用語と分類がチョモランマくらいある。だいたい『フリー』の定義すらできないのです。
昔ブロークンアートと呼ばれた知的障害の方々の演奏までここにカテゴライズされてる。

フリーを準拠枠からの逸脱と捉えると、『準拠枠』ってのが人により千差万別。
そのため演奏家と音楽愛好家の世界では、フリーは益々膨張し尖鋭化し拡散する。
いわゆるフリーを好む私としては面白いのだが、難解という批判にも首肯する。

そこで考える。フリー愛好家を育てるためのカリキュラムの策定。
ポップやクラシックなどのオンテンポ、調性明解な音楽を好む人に対して、
フリーミュージックを紹介するならどうするか。生演奏禁止、音源だけで。

ジャズなら……やはりコルトレーンの『チェイシン・ザ・トレーン』が一曲目になるかな?
楽器の限界を超えて何処かに至ろうとする意思を感じてもらいやすいと思う。
ロックならジミヘンのライブ『星条旗よ永遠なれ』になるだろう。

既知の一般的な音楽技法で表現しきれない膨大な感情を抱えて、
それをあくまで音として発するにはどうすべきか、苦吟した結果の瞬間がそこにある。
よし。この2曲を勝手にフリーミュージックへの第一段階に認定しちゃえ。

では次は? うむ……歌モノが欲しいのう。歌手だって同じ悩みを抱えることがある。
ジャズ界からはパティ・ウォーターズの『ソング・オブ・クリフォード』にしよう。
ロックからはアレアの『7月、8月、9月(黒)』。イスラム語の詩の朗読も聴けてオトク。

第二段階もクリア、というか聴いて楽しめた。よっし次に進みましょ。
ここで私はマイルスの『ビッチズ・ブリュー』を出す臍曲がりである。このアルバムは多義的。
ロックならマニュエルゲッチングのアシュラ名義のソロが、ミニマル全開で宜しい。

さあ下地はできた、どんどん行ってみよー。バリバリの国産品を聴いて汗をかこう。
野中みつまさと人間国宝の『JOLLY』はパワーフリーの名盤だ。
あぶらだこの86年に出た青盤もいってくれ。タイコは吉田達也である。

静かに内省して狂気と覚醒の狭間を彷徨いたいですか、ハイハイ、ありまっせ。
デレクベイリーやミューアのいた『MIC』、ECMから出てるヤツ。
ロックなら御大、灰野敬二の『滲有無』が宜しいと思いますな。

ここまで来れば、ド名盤を心底楽しめる段階に来てるんじゃないかしら。
アイラーの『ゴースト』聴きましょう。これを詩情と言わずになんという。
ドイツの至宝、CANの『タゴマゴ』もどうぞ。ビートってものの融通無碍さに気付く。

何聴いてもフリーに聴こえてきた、ですと? スバラシイ、貴方はコッチの人間です。 
バッハの平均律クラヴィーア曲集はいかがです? ね、ね。でしょ?
ロバート・ジョンソンのコンプリートレコーディングも聴こう。原初ブルースの自由さ。

明確なリズムや調性、楽曲構造を持つものもたくさんありますが、それは枝葉末節。
フリー、インプロヴィゼーションってのは99%精神の問題だとベイリーは言ってる。
それは演る側だけでなく聴取の問題でもある。フリーは遍在してる筈なんですよ。

高田渡や忌野清志郎、椎名林檎にもきゃりーぱみゅぱみゅにも。
ジャンゴにもパーカーにもガレスビーにも、メデスキマーティン&ウッドも。
フリー成分が欠落してる音楽ってのは、政治・経済的理由に過ぎません。

今まさに、ヒヨドリとスズメの鳴き声が聴こえております。「聞こえてる」ではない。
音楽とは聴取の問題にすぎません。実は大昔から分かってる当たり前の話。
何聴いても楽しめる。誠にフリーとは貧乏人向きの鑑賞方法でございますな。




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