イルカの歌
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/09/22 23:22:02
26冊目の洋書。
”The Music of Dolphins” by Karen Hesse(カレン・へス)
しばらく積読予定で購入した本のですが、なんとなくページをめくったら、
引き込まれるように読んでしまいました。
とはいっても、読み終えるのには電子辞書を片手に何日もかかっています。
イルカに育てられた少女の物語です。
4歳のときに飛行機の墜落事故によって遭難したと思われる少女が9年後に発見されました。
イルカに育てられたその少女は、ミラと名付けられました。
保護され研究施設で暮らすミラの様子が、ミラ自身の言葉で綴られます。
ミラの綴る簡単な単語の短い言葉は、豊かなイメージにあふれて、まるで詩のようです。
ミラが社会化(ということば適切かどうかはわからないけど)していくにしたがって、
語彙が増え、パラグラフができ、絵本のように大きかった文字のフォントは小さくなっていきます。
ミラは、音楽にあふれる海とイルカの家族の元に戻ることを常に焦がれながらも、
人間の言葉(英語)を学び、人間の生活を学んでいきますが、
人間を知り人間の音楽や人間の世界を知っていくことの喜びや感動は、やがて悲しみに転じます。
ミラが人間らくしようとすることをやめたとき、フォントは大きくなっていきます。
ハッピーエンドではあるのだけれど、とてもせつない物語です。
自分が人間であることに、なんだか少し悲しくなります。
イルカは擬人化されていません。
ミラの視点を通して見るイルカたちはあくまでイルカで、人間っぽくもありません。
イルカが海で遭難した子供を助けて海で育てるなんてありえないファンタジーな設定ですが、
イルカについて知られていることや、セラピーとして活躍していることを思うと、
それほどありえないことでもないような気がします。
冒頭に、ミラが捕らえられた(保護された)ときの新聞記事?があります。
飛ばして読みはじめて、半分まできたところで冒頭に戻ったんですが、
これはかなりしんどかったです。
読もうとすることをあきらめたら、情報は拾えました。
日本版は読んでいません。
日本版「イルカの歌」金原瑞人訳 (白水uブックス―海外小説の誘惑)
以前、書店で、赤ラインに”海外小説の誘惑”と印刷された表紙の本を見かけたとき、
手にも取らずに、ロマンス小説の新しいレーベルだろうと勝手に思い込んでいました。
違うんですね。それだけいい本を集めていると言いたいんでしょうが、
逆に”誘惑”で購買層を削っているような感じかするのは気のせい?
日本版の海外小説の誘惑は、子供向けではなさそうですが…。
聡明な少女が自ら選択した というのが大きく異なるのですね。
興味があるので日本版を探してみようと思います。
でも、ミラが、音楽にあふれた海とイルカの家族のもとへ帰れてよかったです。
>伊勢うどんサマ アルジャーノンのように知的障害があるわけではなく、
ミラは人間の言葉や生活を知らなかっただけで、友好的でとても聡明な少女なので、
人間を知ったうえで、人間の言葉を捨てていく過程が、とても切なくて辛いです。
せつない話ですね