ひとりの魔法騎士の物語/学園生編~魔法界史1~
- カテゴリ:自作小説
- 2016/07/13 18:15:22
キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン…
「はい、それでは【魔法界史】の授業を始めましょう」
金髪の少女―おそらく10歳ぐらいだろうか―が教壇に立った。
ベルナデッタ(以下、ベ)「まずは、自己紹介からですね。
私の名前は、ベルナデッタ・デ・ルルド。
魔法界史を担当しているわ。
では、早速授業を始めましょう」
ベルナデッタは、教科書を宙に投げた。
ベ「インフローレ・エルティアル!」
ベルナデッタの呪文に反応して、教科書のページがパラパラとめくられ始めた。
ベ「時は、魔法界歴1年……。
全ての始まりは、人間界での出来事にあったわ……。
人間界には、数多くの魔法使いがいたの」
ベルナデッタの言葉が終わると、周囲の風景が変化した。
「ここは……?」
一人の生徒が呟いた。
「人間界で使われる暦―西暦と呼ばれるのだけれど―でB.C.180年頃の人間界よ。
ほら、あそこを見て」
遠くに円形に並んだ、巨大な石柱群を指差した。
石柱群を取り囲むように、人々が立っている。
「あの石柱(モノリス)群は、後にストーンヘンジと呼ばれるものなのだけれど。
そして、あそこにいるのは、魔法使いたちよ。
もっと近くへ行ってみましょう」
ベルナデッタが指を鳴らすと、一瞬でストーンヘンジの近くへと飛んだ。
「【東の予知者】よ、そなたが見た夢はどのようなものだったのか?」
長老のような風貌の男性が声を発する。
「私が見た夢は、鷲の紋章を持つ巨人が私たちを襲うものでした……」
【東の予知者】と呼ばれた男性が身震いしながら言った。
「誰か【東の予知者】と似たような、啓示を受けた者はいないか?」
すると、鮮やかな青を身に纏う少女が手を挙げた。
「わたくしも海より啓示を受けました。
彼方よりやってくる鷲の船に乗った人々がこの地を荒らす、と」
「【海の乙女】も……。
【森の番人】も似た啓示か?」
翡翠のような瞳を持つ青年が答えた。
「【大いなるドルイド】さま、私もほぼ同じ内容の啓示を【森の神々】から受けました。
『我々の森を【鷲の人】が破壊し、切り開き、居座るであろう。』と」
………聖域を奪うと言うのか、【鷲の人】は………
【森の番人】の言葉に反応して、ざわつく。
「鷲の紋章、鷲の船、【鷲の人】……。
どこの者なのだろうか……?」
長老が呟いた。
「【大いなるドルイド】さま。わたくしめへの啓示には詳しく……」
足まで伸びる銀髪をたなびかせる美女が歩み出た。
「【月下美人】よ、聞かせてくれ」
「【鷲の人】とは、はるか彼方に住む【ラティン】や【ローマン】と呼ばれる人々のことをいうそうです。
【鷲の紋章】を掲げる軍隊を組織し、領土拡大や敵の殲滅を行っていると、水鏡から読み取りました。
また【中つ海】で三度起きた戦争では、【ディドの都】を滅亡へと追いやったとも……。
彼らは、彼らの支配を認める者には自由を、
反逆する者には死を与えるのだと……」
「我らケルトの民は、【魔法使い】のみが統べることができる。
よそ者になど……。」
「しかし、反逆すれば【死】のみ……」
「……もう我らには止められぬのかもしれぬな……」
【大いなるドルイド】が呟いた。
「【大いなるドルイド】さまの死は、すべてのケルトの民の死。
次元を超えなければ、なりませんね……」
「【次元の巫女】……」
黒髪の少女が現れた。
「はい、このような時に備えて、転移魔法の開発をしておりました」
「完成したのか?」
「ええ、もちろん」
【次元の巫女】が手を挙げると、石柱が青く輝き始めた。
「我らを新天地へ導きたまえ!
ルテティア・トランセ!」
青い光が魔法使いたちを包み込んだかと思うと、彼らの姿は消えていた。
「その後、彼らはこの世界にやって来たの。
さて、彼らがどうなったかというのは、次の授業でね」
現実世界と直接結びつく言葉の使用は、できるだけ避けました。
元の言葉を暗示させるような言葉で書きました。
【鷲の人】:古代ローマ人のこと。本文中にも書いた通り、鷲の紋章を掲げていたため、この言葉にしました。
【中つ海】:地中海のこと。陸に囲まれた中にあることからこの言葉にしました。
【ディドの都】:カルタゴのこと。伝説上の創始者の名前に因んで、この言葉にしました。