「契約の龍」(113)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/09/19 14:40:22
件の宮廷古典舞曲は、四人ひと組で踊るもので、中ほどでパートナーの交換がある。踊り手の力量が釣り合っていないと、かなりみっともない結果になりそうなんだが…
「そんな暗い顔なさらなくても。あれが踊れるのは国内でも数十人ほど。その中でも「名手」と呼ばれる方々は、この場にはおりませんもの。ねぇ?」
最後の「ねぇ?」がクリスの方に向けられるのは、なぜだ?
「まあ、ちょっとくらいステップを間違えたって、躓いたり、転んだりしなければ、判るような者はこの場にはおらん、という事だ。気楽にな」
「……なぜこの四人なのか、という意味に疑問を抱く方がいるのでは?」
「あら。そういう事をおっしゃるなら、最初にそれを言わないと」
「もう既に注目されてますわ。手遅れでしてよ」
紅薔薇が白薔薇にかぶせるように追い打ちをかける。確かに手遅れだ。王妃をここへいざなう段階で、もう十分に人目を引いている。
「……そのようですね」
思わず深い溜め息が出る。
「はて?注目されるのがそんなに嫌かね?昔はそんなことはなかったと思うが」
昔、って、いつの話ですか。
「それはまあ……色々ありましたから。成長途中で。具体的に何が、と聞かれても困りますが」
「まああ、残念。お聞きしたかったのに。クリスティーナなら、聞く機会はあるわよね?」
「…不快な思い出なので、できれば思い出したくはないんですが」
「まあ、冗談ですのに。…でも、その思い出を語るのに比べれば、大したことはないのではありませんこと?踊りを披露するくらいは」
そうきたか。
「不快な思い出を重ねるだけ、という事にならなければよいのですが」
クリスが横にやってきて、そっと腕に触れる。
「私と踊るのは、嫌ですの?」
…これは、意訳すると「自分も嫌なんだから、我慢しろ」と言う事か?
「そんな、滅相もない」
機嫌良く見えそうな笑みを浮かべて返す。
「謹んでお相手させていただきますとも」
曲が終盤に差し掛かったところで、それが起きた。…いや、その前から、兆候はあったのかもしれないが。
最後にもう一度、元のペアに戻るために向かい合うところで、向こうのペアがもたついた。
向かい合った相手方の顔色が悪い。
と、国王の体が斜めに傾いだ。クリスが慌てて支える。
「交替をする余裕はなさそうね。このまま終わりましょう」
交替するタイミングで王妃がそう言い、クリスが素早くうなずくのが見えた。
曲が終わると、さりげなく王妃がクリスの反対側にまわって、立っているのがやっとの様子の国王を支える。こちらもクリスと代ろうとしたが、割って入れないので、後ろから二人を支える。
「どこへ?」
自分自身も苦しげなクリスが、短く訊ねる。
「とりあえずは、人目につかない所へ。広間の周囲に控えの間が用意してあります。そこから、「奥」へ移送してほしいのだけど…」
こちらに目が向けられる。
「お願いできる?」
「…それは、「転移魔法」で、という事でしょうか?」
呪陣なしでの転移魔法は、術者が転移先の状況が把握できていないと危険なのだが。
「転移でも浮遊でもなんでもいいわ。早くて体に負担がかからなければ」
「……承知しました。最大限、陛下の安全に配慮します」
金龍が関係してるです
かな?
っと推測して見たりし
て^^