Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


おばあちゃんのマンションが


今日は、自転車でちょっと遠出をした。
うちのほうから、都心にむかって。
とおくないのかな。グーグルのルートで7キロ。
ちょっと用事があって。
電車やバスでいってもよかったんだけど
あまりお金をつかいたくなかったので。

用事はともかく。
具体的なルートはにごしておくけれど、
ほぼいっぽんみち。
この7キロの、もっと先に、渋谷がある。
その渋谷から、むかし、
バスにのって、このみちをとおったことがある。
祖母がこの道ぞいにすんでいたのだ。
わたしが小学生の時。
渋谷からバスでずいぶんあった記憶がある。
ちなみに、今のうちからだと、たぶん三キロ先ぐらい。
つまり、七キロより手前なので、
今日も行き帰り、通ったのだ。
マンションで…。
けれど、行きは道の向こう側だったこともあり
通り過ぎてから気付いた。
すぐちかくに昔はレジャー施設、ボウリング場とか
ゲームセンターとか、そんなのが入っていた場所。
いまはスーパーと飲食店になっている
そこを通って、ああ、おばあちゃんちを過ぎてしまった
と思った。
そして帰り。
こんどは見逃さない。
マンションなのだが、一階が文具店。
たぶん名前もあのころと同じ。
ここの7階だったかに住んでいたのだ…。
もうかなり前なのに、こうしてまだ建物が
のこっていることも驚きだ。
近くの景色もあまり変わらない。
そして、小学生の時、こんな風に
またここを通ることがあるなんて
思っただろうかとぼんやりと思う。
祖母はわたしが小学五年生のときに亡くなった。
祖母といっしょに住んでいた伯母や従姉たちは
たぶん、亡くなったのをきっかけに、べつのマンションへひっこした。
だから、もうそこにはだれもすんでいないから、
通ることもなくなったはずの場所だったから。

ただ、このマンション、自転車で通ったのははじめてだったが
渋谷発着のバスがうちの近くまでのびていることもあり
バスでは何回かとおったことがある。
そのときに気付いたのだ。
バスの停留所の名前をきいて、びっくりした。思い出したのだ。
おばあちゃんの家だ…。

ちなみに3月11日の震災のとき、この道をとおって渋谷から
歩いて帰ってきた。
そのときは、おばあちゃんのことはごめんなさいだが、
あまり思わなかった。
方向音痴なこともあり、歩いて家まで帰れるか不安だったし
(一本道だから、たぶん間違いはないとは思ったが)
家人とも連絡がとれなかったので、
たぶん、それどころではなかった。
おばあちゃんちのちかくの酒屋さん、
外にテーブルを出して
温かい飲みものがあります、
どうそ飲んてください、店内にトイレもあります
と店員さんがいってくれていたのが
印象的だった。
その酒屋さんも、今日通った。

年たけてまた越ゆべきと思いきや 命なりけり 小夜の中山
西行法師

おばあちゃんちのあった道が
こんなふうに、いろいろとわたしに関わってくるなんて。
年をへだてて、またここにくることになるなんて…
こんなとき、いつも、この西行法師の歌を思い出すのだった。




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