Nicotto Town



『優しい嘘』




「雪だるまさんがいなくなっちゃったよ~」

女の子が泣いていました。



北の街の春は遅い。

それでも、少しずつ春が兆し出す四月の初め。

ここ数日の暖かさで、降り積もった雪も小さな山が残っているだけです。

「雪だるまさん・・・」

小さな雪の塊の上に残された青い帽子。

しゃがみ込んで小さい少女は泣き続けていました。


「泣くな!」

上から、怒ったような声。

見上げると、男の子が立っていました。

「お、俺はその雪だるまだ。お、お前がいつまでも泣いているから、仕方なく戻ってきてやったんだ」

男の子が、怒鳴りつけるようにいいます。

「え?でも・・・」

その子は、どう見ても、同じクラスの男の子でした。


「お、それは俺の帽子だな」

少女に見つめられて恥ずかしかったのか、男の子はそそくさと雪まみれの帽子を拾い上げ、頭にかぶりながらいいます。

「お、俺がまたい、一緒に遊んでやるから、いつまでも泣いてんじゃね~よ」

少女が驚いたようにいいます。

「雪まみれの帽子なんか被ったら、風邪ひいちゃうよ」

「雪だるまは風邪なんかひかんっ」

男の子は、ちょっぴり赤い顔で少女の手を引き、怒ったようにずんずんと歩いて行きました。



女の子が泣いています。

「どうしたの?」

赤ちゃんを抱いた女の人が声をかけます。

「雪だるまさんがいなくなっちゃったの」

うつむく女の子の視線の先には、小さな雪山。

その上にちょこんと乗った赤い帽子。

「あなたは、雪だるまさん、好き?」

こくん、と頷く女の子。

「だったら大丈夫。雪だるまさんはきっとまた、会いに来てくれるよ」

「ホント?いつ?」

訪ねる女の子に、女の人は道の向こうに目をやりながらいいます。

「きっとすぐに、かもね」

女の人の視線の先では、泣いていること同じくらいの女の子が、こちらを見つめていました。


「他所の子に嘘を教えるのは、あまり感心しないね」

女の子と別れたあと、隣を歩いている男の人が、女の人に言います。

「あら、どの口がそんなこと言うのかしら?風邪をひいて一週間も学校休んだ雪だるまさん」



おしまい(#^.^#)




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2016/04/03 21:16
今晩は~♪

ほぉ~<(●^^)>=З 素敵なウソ~素敵なお話ですね~^^
(⇈ 頬に手をあて、うっとりして溜息を、付いている絵文字のつもりですw)

赤ちゃんを、抱いている女の人の隣に居たのは…
その女性のお子さん(男子)なのかな?
最後に、推理させてくれて、ひらめいた時に
「脳がアハ」
(脳学者の茂木さんが、よく言ってるヤツ)になって~
楽しくなりますね^^

最後まで楽しませてくれて本当に~ゆちゃまのお話は、面白いです。





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