Nicotto Town



『雪街幻想』



「いつまで降れば気が済むのかしらね」

道脇にうずたかく積まれた雪を見て、ヒロコはつぶやきます。

北の街。

春はまだ遠い。


「何かしら?」

ヒロコは、雪山の中に、赤く光るものを見つけ、手に取りました。

それは、雪ウサギでした。

「お目々がひとつしかないわね。それにお耳も」

雪山の中に紛れた時に、なくしてしまったのでしょうか。


「このままじゃ可哀想ね。確かあったはず・・・」

バッグの中を探すと、ありました。

小さな赤いあめ玉。

「ちょっと大きさが違うけれど、勘弁ね。ないよりはいいでしょ」

お耳は、垣根の葉っぱを一枚、貰いました。


「じゃあね。今度は気をつけるのよ」

そう言って、少しいびつな雪ウサギを郵便ポストの上に置き、ヒロコは再び、家路へ急ぎました。


その夜。

ピンポーン

ヒロコの家の呼び鈴が鳴りました。

「こんな時間に誰かしら」

出てみると、そこには、小さな女の子が立っていました。


「こんばんは」

すっぽりと、蓑を被った頭を下げ、女の子は言います。

「雪ウサギを見つけてくれてありがとう」

「一緒に遊んでたら、どこかへ行っちゃうんだもの。明日は晴れて暖かくなるから、早く雪の里に帰らなくちゃダメだったのに」

「ほら、あなたもちゃんとお礼をして。素敵なお目々とお耳を貰ったでしょ」

雪ウサギは、少女の手のひらでぴょんぴょとはねてから、ぴょ~んと大きくはね、まだ雪の残る歩道へと走り出しました。


「あ、こらまて」

少女も慌てて後を追おうとしましたが、もう一度振り返り、言いました。

「あたしはこの街が大好き。雪が降ったらまた来るね」

そう言って、手を振りながら、雪ウサギを追って走り出しました。

「待て~。また迷子にならないでよ~」


ここは北の街。

春はもう少し先。

また、雪の降る日もあるでしょう。

「またどかで会えるかな。会えたら良いね」

小さくなっていく少女と雪ウサギを見送りながら、ヒロコは思うのでした。



おしまい

(#^.^#)

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2016/03/14 10:17
めぷちん♪さん

いつもありがとう♪

わたしの住む街には
今年は来てくれませんでした
来年は来てくれるかな~

(#^.^#)
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2016/03/14 10:09
ひろさん

逢えた?

(#^.^#)
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2016/03/13 14:18
今日は~♪

ほぉ~Ψ(●^^●)Ψ~可愛くて素敵なお話ですね^^

最初は、『少女が、雪うさぎの化身で、
「恩返し」に来たのかな?』と思ってましたが、
雪うさぎさんは、少女のお友達だったのですね^^

雪が積もれば…どこかで会えるよね^^
私も会いたいな~^^
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2016/03/13 13:39
きっと また 逢える・・・



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