『線路は続くよ』
- カテゴリ:30代以上
- 2016/02/05 10:13:15
# 春の足音
窓の外は雪のホーム。
駅舎の向こうに見える街も、降り続く雪に煙っている。
暦は春を告げても、この街の冬は終わらない。
通りかかった車内販売員からお酒を受け取る。
『雪見酒ですか?』
答えようとした時、発車のベルが鳴った。
『わ~!降りますっ、ちょっと待って~っ』
後ろの座席から、慌てた若い女性の声。
閉じかけたドアが再び開く。
『すみません~。ほら、あなたも早くしたくしてよ』
『待ってくれよ。そもそも此所は何処なんだい?』
窓の外を見回し、男性が言う。
『知らないわよ。降りるはずだった駅より、大分先なのは確かね。あなたがいつまでも寝てるからよ』
『起こしてくれたら良かったじゃないか』
『わたしだって寝てたのよ』
身支度しながらバタバタと、二人がドアのところにやってくる。
『急いでくださいな。発車の時刻も過ぎてますので』
車内販売員が言う。
『本当にすみません。この人ったら、本当にねぼすけで』
(いや、あなたさっき、自分も寝てたって言ってませんでしたか?)
そう言いたげな顔で苦笑する販売員。
二人が汽車を降りる。
『これからどうするんだい?別の汽車で戻るかい?』
『もうこの街で良いんじゃない?また寝過ごすのが落ちよ。大体、何度目だって思ってるのよ』
『まあ、春眠暁を覚えずって言うくらいだからな』
『うまい事言ったつもり?』
仲よさそうに手をつなぎ、ホームをゆく二人。
女性のコートのポケットから、何かがこぼれ落ちる。
淡い光がこぼれ落ちたその場所は、雪が消え、小さな花の芽が顔を出す。
やがてドアが閉まり、汽車が走り出す。
淡雪の舞い落ちる、白い街。
『この街が春色になるのは、もう少し先かしらね』
『そうですね、あの二人ですから』
汽車は走り続ける。
移りゆく季節の中。
次は、どんな景色に出会えるのだろう。
つづく
(#^.^#)
わぁ~\(^^)/~今回も~素敵なお話~♪
おっちょこちょい~で、ズボラな
目くそ、鼻……モトイ…どんぐりの背比べ夫婦さんたち~w
「まるで我が家の事の様」と、
少々~胸が、チクッとしながら、読み進めて行ったら~
最後の「女性のコートから、何かがこぼれ落ちる…」から
素敵な~ファンタジーに変わって~
胸が、熱くなりました^^
彼女ら(かかあ天下っぽいのでw)の性格のせいで~
この街の冬は、あけないのかな?w
そもそも~降りるハズの街は、大丈夫なんだろうか?と
クスっとも笑えて~素敵な気持ちになりました^^
本当に~素敵なお話を作るのが、うまいですね~。