『線路は続くよ』
- カテゴリ:30代以上
- 2016/01/31 11:29:20
# 老人と酒
小さな無人駅
旅支度の老人がひとり、ベンチに座っていました。
『あっ、いた。おじいさん、今日はお店お休みなの?』
ひとりの少女が老人に話し掛けます。
『お酒を買いに来たら閉まってるから』
少女の指さす先は、駅前の寂れた酒屋。
閉じたシャッターには、『閉店しました』の文字。
『ああ、もう店じまいじゃ』
寂しそうに老人が言います。
「せっかく来たのに~』
『酒なら、大通りのコンビニあるじゃろ。こんなところまで来んでも』
『お父さんがね、此所のお酒じゃないとダメだって言うんだもん』
『ほう。奇特な人もいたもんじゃ』
『お父さんはね、此所のお酒が大好きなんだよ。いつもはぼけっとした顔してるのに、此所のお酒を飲んでる時だけは凄くしあわせそうなんだよ。それにね、此所のお菓子、美味しいのがいっぱいあるし、わたしもこのお店大好き。あのね、お父さんが、お駄賃にお菓子買っても良いよって言ってくれたんだよ』
汽車が駅に着く
寂れた無人駅
窓から見えるホームには、ベンチが一つだけ
大きなバッグを足元に置いたおじいさんと、小さな少女が、駅前の閉まったお店の方を見ながら話をしている。
『この汽車に乗るのかな?』
通りかかった車内販売員に声をかける。
『どうでしょうね・・・』
『あの、この汽車にお乗りですか?お乗りでしたら、まもなく発車しますのでお急ぎください』
車内販売員が汽車から降り、声をかける。
少女が驚いたように振り向く。
『え、おじいさんどこか行っちゃうの?お店は?』
『どこにも行かんよ。ちょっとひなたぼっこをしたいただけじゃよ』
そう、少女に行ったあと、笑顔で振り向いて言う
『すまんね、わざわざ声をかけてもらって。だが、わしは今から、店を開かにゃならん。このお嬢さんに、うまい酒とお菓子を見繕ってやらねばならんからの』
ドアが閉まり、汽車が走り出す。
『おじいさん、何だかうれしそうだったね』
戻ってきた販売員に言う。
『そうですね』
『でも、美味しいお酒ってどんなのだろう。飲んでみたかったな』
『そうおっしゃるだろうと思って、仕入れておきましたよ。はいどうぞ』
『さすが、ぬかりないわね。ありがとう』
販売員からお酒を受け取る。
『うまい酒とな。わしにも一つくれんかね』
『でたわね、呑兵衛フクロウ。仔猫たちは放って置いて良いの?』
『ほーっほっほ』
汽車は走り続ける。
次どんな景色が待っているのだろう。
つづく
(#^.^#)
わぁ~\(^▽^)/~待ってましたぁ~♪
大好きな~「線路は続くよ」シリーズの最新作ですね~^^
今回は「老人と梅」イヤ…w…「老人と海」ならぬ
「老人と酒」ですね^^
最初は、どうみても「汽車を、待ってる風」のおじいさん…
でも~少女の言葉に、まだ自分のお店のファンが一人でも
居てくれるなら…と思いとどまったのかな~^^
本当に素敵な~お話です^^
本来お酒は、ほのぼの皆仲良くする為~皆リラックスする為の物の筈…
どこかの酒乱のDV男にもこのお話を、読ませてあげたいと思いましたw
天国のヘミングウエィ~さんも
このお話を、読まれたら~ウィスキーでも飲んで~
「良い話ぢゃ~ウェイ~b」って言うかな?
~ゆさんワールド、大好きです♪
ステキなお話を、ありがとうございました(^^)