自作小説倶楽部11月投稿②
- カテゴリ:自作小説
- 2015/11/30 22:37:35
『ダブル』後編
「ふぅー。やばいやばい」
奈々は子機を放り出し、ソファに倒れこんだ。
「はしたないわね」
母の九美子が非難の視線を投げかける。
「ねえ、家のローンも払い終わるのにおばあちゃんたちに本当のこと話しちゃダメなの?七五三のこと」
「駄目よ」九美子が勢いよく首を振る。
「着物は両方から受け取ったし、これからあんたの学費のことだってあるんだからね」
「えーっと。北海道のおばあちゃんが黄色とピンクで花柄。熊本のおばあちゃんが紫とピンクで手毬」
奈々が記憶を確認しながらため息をついた。滅多に話題になることはないのですっかり忘れていた。
北海道と熊本、それぞれに住む祖母はめったに顔を合わせることはなかったが、同郷の出の幼馴染だ。お互い夫の故郷と仕事の都合で何十年も会わずに北と南で遠く離れた土地に住み、歳を経ていた。わかったのは両親の結婚前の両家の親族の顔合わせの場だ。それ以降〈仲の良い幼馴染〉という建前でお互いをライバル視しているふしがある。二人に気に入られた孫の奈々はお年玉にクリスマスや誕生日のプレゼントで大いに恩恵を被ってきたが、困るのは大きな祝い事の時だ。
奈々の七歳の七五三でどちらも奈々の着物を贈ると譲らなかったため、当時住宅ローンのため双方から援助を受けていた両親がとった苦肉の策は着物の早変わりだった。できるだけ近くの美容室で黄色の着物を着せ、一度目のお参り、写真を撮ると急いで引き返して今度は紫の着物を着せて神社に戻った。奈々が転んだのは窮屈な着物を二度も着せられ引っ立てられるように神社を往復させられたためだ。
正直あまりいい思い出になってない。でもまあ、昔のことだからいい
「安心するのは早いわ。3年後があるから」
九美子が言った。
「へ?」
「成人式よ」
「げ、おばあちゃんたちに断ってよ。その方が経済的だって」
「無理よ。あんたの振袖のために二人とも積立て貯金してるって言うのよ。まだまだ二人とも元気だし。ママもカルチャーセンターの着付教室に通うわ」
「やだー!!」
ソファーに突っ伏して孫娘は頭を抱えた。
家族の交わりを描いているところに惹かれました
困ったチャン、不思議ちゃんといった変人は
掌編では大きなファクターになるものだなあと
実感しました
はたからみていると微笑ましいWおばあちゃんコメディーです^^
されどそこには愛もある?
少し考えさせられたエピソード
うちの坊の誕生時、私の実母がはっちゃけて五月人形を勝手に買ってしまい、
相方のお母ちゃんがしょげちゃってあわわわなことに;ω;
それ以降、七五三や入学などのお祝い品は、こちらからおばあちゃん二人に
欲しいものを指定するようになりました^^;
(実母=学習机、義母=ランドセルとかとか)
しかし、そういうことも、いつかは
懐かしいお祖母ちゃんの思い出になるのだろうなあ
と考える拙です