Nicotto Town



故 佐渡川準氏の遺作『あまねあたためる』


一昨年、自らこの世を去った漫画家、佐渡川準氏。
作品も少なく、一般的な知名度は低い。『あまねあたためる』は遺作ですね。
先日、古本屋で見つけて2冊買ってきた。読んだ。泣いてしまった。柄にもなく評論しよう。

作者と作品を切り離して考えるのが私は好きです。
ゴッホの絵が凄いのは耳を自分で切り落としたからじゃないし、
ランドセル背負ってハコに現れる奇行と阿部薫の演奏は全く関係ないと思う。

しかし今回、『あまねあたたまる』冒頭は……首つり自殺を止める少女の話。
うわー……考えてしまいました。この人が作品で伝えたかったことを。
結論から申し上げると『 Wish you were here 』とつぶやいていたのだと思う。

デビュー作『無敵看板娘』は稀有な作品でした。
地場密着型の下町美少女格闘ギャグマンガ。渥美清の延長線にある。
山田洋次ではない。渥美の『闇を抱えた明るさ』を感じる名作だった。

2作目は王道ヒロイックファンタジー、幼い少年少女が主人公。
でも何か違う。少年ジャンプ的な要素とは違う何かがある。
あ……これは……「自分のそばに、こんな人たちがいてくれたら」という想いかな?

空手物の三作目はあまり読んでないのでパス。
そして『あまねあたためる』。元気な少女が周りを元気にする、温める。
ギャグ要素とお色気要素が若干あるが、関わる人を皆元気にする。

『遍く 温める』存在。佐渡川氏はこういうものになりたかったのかもしれない。
でも、彼の傍にこそ、彼の生み出したキャラクターはいなければいけなかった。
その孤独を考える。凄く分かる。原罪を克服しようとする苦悶かもしれないから。

無名の作家として風化し、忘れられていくのでしょう。
だけど私は覚えておこう。この人の作品は人生と対峙した名作だと思う。
『あまねあたためる』秋田書店、全3巻。佐渡川氏、安らかに。





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