無題 1
- カテゴリ:自作小説
- 2015/08/16 23:27:00
要注意⇒ K×H二次 腐妄想注意 本来のゲーム設定無視
◇◆◇◆◇◆
「しまった……」
首の後ろで束ねた色素の薄い髪を砂埃にまみれさせながら少年は呟いた。
しまった、と思った時にはもう遅い。さんざんブレードを振り回しているにも関わらず、対峙する鋼鉄の化け物はけろっとした顔で攻撃を受け止める。反して少年の容貌は這う這うの体だ。
「どうする? ポーションを使って仕切り直すか? それともこのままやられちまって、あいつが通り過ぎるのを待つか……?」
どちらにしても少年には厳しい選択だった。
まだ新米の戦士。体力そのものも少なければ、ポーションやエーテルという回復アイテムも最低限しか持っていない。戦闘開始からポーションを使いつづけたせいで化け物の体力は半分以上削れているはずだ。けれど残り半分を削り落とす為にあと幾つ使う事になるのか。頭の中でざっと計算して、絶望という答えが出た。
かといって倒されて諦めるには今まで費やした時間もポーションも惜しい。
…… 悔しい ……
視界が歪む。涙が溢れてきているのが解る。
ミッションとはいえ、まだ何ひとつ鍛えられていない自分が手を出して良い相手ではなかったのだと思い知る。
「畜生……ちくしょぉぉぉぉ! 何でこんなやつに手ぇ出したんだよ、俺のばかやろうー!」
やけっぱちだ。もう倒れたってしるものか。どうせ化け物にはかすり傷程度の攻撃だろうがせめて最後の一撃をくらわせたい。その直後に自分がトドメの一撃をくらう事も覚悟の上で。
「今日のミッションこれでしゅーりょぉー!」
雄叫びをあげてブレードを振り上げた瞬間、化け物と少年の間に光りが走った。
「……え?」
何事かと硬直してしまった少年の目に、颯爽とブレードを操り鋼鉄の化け物を一撃のもとに下す、侍風に髪を束ねた青年の姿が飛び込んできた。
「大丈夫?」
塵となった化け物を背に、さしのべられた手を少年は「ありがとう……ございました……」目を見開き彼の姿を焼き付けながら受け取った。
ここはキングダムハーツキー。ハートレスという化け物を倒し、ミッションをこなす事で強くなり、報酬やハートレスが落とすアイテムを得る事で暮らしている、僕たちは戦士だ。
助けられたその日から、少年は青年の一歩後ろを歩くようにくっついて、一緒に 《仕事》 をこなしてきた。おかげで戦い方も随分とさまになってきた、と、少年は自分で思っている。
「今日はここまでにして帰ろうか」
青年が振り返り微笑んだ。彼の前には死屍累々のハートレスたちが塵となりながらアイテムや光を落としてゆく。爽やかな笑顔の青年だが、ハートレスへの攻撃ぶりは常軌を逸している。その背中を眺めながら戦っていると少年は自分自身も同じようにつよくなっていくようで、嬉しかった。
「はい、帰りましょう。皆さんも今日は終わっている頃ですね」
青年にくっついてゆくように行動を共にするうち、彼が入っているパーティーのメンバーとも知り合い、その中で明るくよく話してくれる女性からパーティーへの参加を勧められた。
パーティーに入ってしまうとメンバーで大きな戦いに参加する事になるので、どうしても他の戦士との出会いは限られてくる。焦って自分の居場所をひとつと決めてしまう事に悩んでいたが、結局は参加を決めた。日に数度訪れる大物を叩く時に気心の知れた仲間たちで戦える事は心強かった。
からん、と軽いドアベルを鳴らして扉を開くと、既に帰ってきているメンバーが銘々に食事をとったり酒を呑んだりしている。その中のひとりが帰ったばかりの二人を見つけ、声をあげた。
「まぁた一緒だったの? ホントに仲いいわねぇ」
青年は軽く微笑みながらカウンターの席に着く。
しかし少年は女性陣に捕まってしまった。
今日はどこに行っていたの? どのハートレスを何体やっつけたの? 頑張ったのねぇ、偉い偉い。
これ美味しいわよ、食べなさい。ジュースもあるわよ。
などと、まるでままごとの人形だ。助けを求めるように青年に視線を投げると、にっこりと微笑み返されてしまった。少年が皆に可愛がられているようで、「よかったね」と幼い弟を見守るような笑みだ。
その視線のやりとりに気づいた一人が、
「ダメよ。あの人とは今日も朝から一緒だったんでしょ。少しは私たちとも遊びなさいよ」
少年の頭を胸に埋めるように抱き寄せた。
「やめてください! ちょ、息が……」
「なぁに? 私の胸じゃ不満なの?」
「この子は彼の方がいいんですって」
「まぁ! 女より男同士の方がいいだなんて、それはお子ちゃまよ。お姉さんがもっといい事教えてあげるわよ」
きゃらきゃらと楽しげに少年をからかう。からかわれるとムキになるので、実にからかい甲斐があるのでまた、からかう。そんな女性陣の気持ちに気づくわけもなく、彼はまたムキになってしまう。
「変な事言わないでくださいよ! もう……勘違いされちゃうじゃないですか」
「誰に? どんな勘違いを?」
突っ込んで聞かれて、自然と目が青年の背中に走った。
「ふぅん……あんた達って勘違いされて困るような仲なの?」
ニヤリ、と、片隅で酒を呑んでいた男装の女戦士が話しに加わってきた。
「変な事言わないでください! 彼に失礼です!」
「そうなの? 失礼なの?」
女性の一人が青年に聞いたが、返事など待たない。
「失礼じゃないって。良かったわねぇ、ラブラブねぇ」
「やめてくださいよぉ!」
からかわれてどんどんムキになる。その声を背中に聞きながら、青年はくすくすと笑いながら酒の入ったグラスを傾けた。
ここは、楽しい。
夜も更けて、少年はようやく女性達から解放されてベッドに潜り込む。
窓から差し込む月明かりを眺めながら、彼は心の中で呪文のように唱える。
この楽しい毎日が、いつまでも続きますように。
メンバーは皆楽しくて優しい。
新人の自分にも分け隔て無く情報を与えてくれる。
クラスの高いパーティーのように討伐ランキングの常連になるほど強くなる、という夢もあるけれど、今はこの雰囲気の中が心地よい。
どうか、明日も皆で楽しく。
そして、明日も無事に帰って来れますように……
けれどその祈りは翌日の討伐で、あっさりと切り裂かれてしまった。
◇◆◇◆◇◆
コンティニューするかい?(・∀・)
あんまり腐展開にするとモデルの人に怒られ…
アワワワ!
モデルは居ません!いませんよ!
腐的展開になるのか?
少年に道を誤らせてはイカンですよ~
(・∀・)
少年よどっちもいっちゃいなよ☆
推敲していないので誤字脱字てんこもりです。明日には直します。
wordからの直コピなので行間おかしいのも明日直します。
キングダムハーツキーの二次創作です。
運営という名の神様が統べるという、独自の世界観なので
いろいろ違和感ある方にはごめんなさい。
少年と青年に、特別なモデルは居ません。多分(・∀・)