「線路は続くよ」
- カテゴリ:日記
- 2015/06/08 10:31:05
#6
「カワ・ラ・ノーグ」
汽車が、川沿いにさしかかる。
大きな川の向こう岸。
その広い河原と小高い土手に広がる、綺麗に整地された公園。
色とりどりのお花と、並んだ木々。
「カワ・ラ・ノーグと言うらしいですよ」
車内販売員が言う。
「荒れ果てた河原を整地して作った公園だそうですよ。昔ながらの自然を残しておくため、らしいです」
「昔の河原って、こんなに綺麗だったかな・・・」
子供の頃見た河原は、もっと草が生い茂っていたような気がする。
遊歩道なんて無かったし。
「そうかもしれませんね。でも、景色は綺麗な方が素敵だと思いませんか」
「そうだね」
汽車が駅に着く。
ドアが開き、風の香りが車内に流れる。
「きゃ~~~~~~~~っ」
車内に絶叫が響き渡る。
前の車両からのようだ。
車内販売員とともに、駆け寄る。
車両をつなぐドアが開き、桃色の影が飛び込んでくる。
前の車両に乗っている、桜の少女だ。
「どうしたの」
少女は、腰にすがりつきながらドアの向こうを指さしている。
おそるおそるのぞき込んでみると、そこには・・・
車両を埋め尽くす大量のカヘル。
この駅から乗ったのだろうか。
その大量のカヘルのを縫うように、ひとりの女性が近づいてくる。
透き通るような姿。
精霊?
「すみません、わたし達の席はどこでしょう」
精霊が車内販売員に声をかける。
「切符を見せていただけますか」
大量の切符を受け取る車内販売員。
どうやら、カヘル達みんな、乗客のようだ。
「このカヘル達は?」
車内販売員が切符を調べている間に、精霊に尋ねる。
「ここの公園に住んでいたカヘル達です」
「それがどうして」
「この子達は、ここにいてはいけないのですって」
「外来種?」
「さあ?ここで生まれた子達なのは確かですけどね」
「わかりましたよ。みなさん、一番うしろの車両ですね」
車内販売員が言う。
「ありがとうございます。みんな、あっちだって。さあ、付いてきて」
精霊が、うしろの車両へと歩き始める。
カヘルの行列が続く。
カヘルの上には、ふよふよと漂う淡い光達。
「これは?」
光に手をさしのべて聞いてみる。
「その子は・・・気になさらない方が良いですよ」
ちょっとかなしげに、そしてちょっといたずらっぽく笑って、精霊はうしろの車両に姿を消す。
「どこに行くのかしら」
カヘル達を見送り、誰ともなしにつぶやく。
「『誰も知らない場所』だそうです」
うしろの車両から、「きゃ~」、「わ~」と、叫び声が響く。
「ホームから行ってもらった方が良かったんじゃない?」
「そうかもしれませんね~」
車内販売員と顔を見合わせ、笑い合う。
やがて、叫び声も聞こえなくなる頃、発車のベルが鳴り、汽車が動き出す。
人が創り出した、自然の楽園をあとにして。
汽車は走る。
次は、どんな景色が待っているのだろう。
つづく
今回も~可愛くて~面白くて~楽しいお話でしたぁぁ~。
このシリーズを、読ませて頂くと、気持ちが~ほっこり~♪致します^^
外来種だからとのけ者にされる~可愛そうなカヘルさん達~
彼らが、幸せに過ごせる場所が、あると良いのにね~。
そして今回、特に衝撃だったのは、やっぱり~
「大量のカヘルさんが、車両に乗って来た」所でしょう~か…w
想像するとー相当凄いかも~www
リアルに、普段電車に乗ってて、駅に着いて大量のカヘルさんが、
乗って来たら~流石のカヘル好きの私も悲鳴を、あげるかもですw
この間のお話の続編です。
あのお話は、独立したお話ですけどね。
あのままでは、やっぱり何となく嫌だったので、続きを書いてしまいました。
書いていて
「本当に書きたかったのは、こっちなんだ」
と、気付きました。
そうそう、前回のお話では書き忘れたけれど
「カワ・ラ・ノーグ」
と言うのは、この公園の名前です。
ケルト神話の「ティル・ナ・ノーグ」から採りました。
(#^.^#)