✪ 月光少年
- カテゴリ:30代以上
- 2015/05/05 21:47:22
学生時代に一度だけ旅行したことのある、
異人館が並ぶ街。
また来たいと思っていたのだが、
仕事に追われた生活の中では難しくてすっかり忘れていた。
今回は仕事でたまたま訪れた。
そそくさと仕事を終わりにして街散策へ、
バスの中から眺めた古風な建物のある一角へ向かった。
そこは看板通りで外観を残したまま、
店舗や小劇場などが立ち並んでいた。
以前に訪れた時はここへは来なかった、
「こんな場所があったんだ」独り言を言いながら、
蛇腹模様の胸飾りや破風を見上げながら歩いた。
早くも夕闇がたちこめはじめて、
いつのまにか長い人の影に囲まれていた。
とりわけ古さのきわだつ建物の青銅の扉、
ふっと自分の濃い影が扉の中へ吸い込まれる気がした。
その自分の影を追うように扉を開くと、
地下へ降りていく階段へと続いている。
植物めいた曲線を描く手摺が蔓のように地下へ滑り込んでゆく、
「妙な形の手摺」そんなふうに思いながら降りていくと、
階段の下に透かし模様のあるガラスが見えた。
紅色の燈を映し出している。
骨董屋か珈琲店を思わせる雰囲気なのだが、
以外にもそこは画廊だった。
羊皮紙に似た質感の紙に「月光少年展」とだけ記されている、
不思議に思いながら足を踏み入れた。
その地下室は都会の雑踏の中だとは思えないほど鎮まり、
壁は耳をそばだてている。
お店の前にはもう一つの扉がありその扉を開けて最初に見えたのは、
洞窟のように暗い部屋の隅にいる少女のような人だった。
彼女は腰かけていた椅子を立ち上がり、
すぐに近くまで歩み寄ってきた。
「いらっしゃいませ、中をご案内します」
白い顔の少女のような人はどことなく体温が低そうで、
人間離れしているような・・そぅ人形のような人に見えた。
どう見ても十一・十二歳ぐらいにしか見えない彼女が、
画廊などで案内役をしている不自然さを深く考える間もなく、
歩き出した彼女のあとを追った。
作品はどれも小さなオブジェというべきもので、
円形や矩形の台の上に複雑な螺旋を描くネジやバネ、
樟の歪んだ枝などがぽっんぽっんと点在している。
拍子抜けするくらい単純で、あっさりとした展示だ。
彼女はときおり作品に触れながらゆっくり室内をめぐり、
やがて起点へ戻った。
帰り際、地上へ戻る階段の手前で私は彼女を振り返った。
「このオブジェたち、どうして月光少年という題名なの?」
「これらがすべて月光少年の部品だからです」
「え」
「月光少年というのは精巧な自動人形のことです、
水晶の電池で動きます、私も・・・」
彼女はそういうと微笑んで静かに扉の向こうに姿を消した。
ひき込まれますね
先が気になります
妖し気な彼女。
目覚めた 彼女の変化が
気になる・・・・・・っっh
こんなお話し、大好きよ^^
夢にでてくればいいのに~~月光少年*^^*