ビアンに好かれる。
ところでいつからレズの事をビアンと呼んでるんだ。
レズに差別的ニュアンスがあるからビアンて呼称を使うらしいけど、私はビアンのほうが排他的に聞こえるんだけどな。
私の知ってるゲイは自分で「ホモでーす」て言うから、ホモやレズという呼称に差別的ニュアンスはないんだと思う。
言葉そのものに差別的意味合いがあるんじゃなくて、その言葉を使う人間が差別的意味合いで使ったかどうかじゃないかな。
私は利き手が左の息子に「ぎっちょ」て言う。
左利きやレフティなんて言うよりよっぽど私らしい愛情が伝わると思うから、使う。

私の知っているレズがそうなのか、レズが全体的にそうなのかは知らないけど、少なくとも私が好かれたレズたちは女が好きだと公言していない人たちである。
ホモたちは言う、早い段階で男が好きだと公言する。
バイたちも言う、ノンケもゲイもどっちもいける、て。
でもレズは言わないのだ。
言わないから普通に女友達と思って接する。
だけど彼女たちは最初から私を恋愛対象として見ている。
私が食べ切れないからとパンを半分あげたのを、飲みさしのジューズをひとくちちょーだいって言ったのを、バレンタインデーでチョコレートをくれたのを、私だけが友達と思っていて彼女たちはくっきり恋人目線だったのである。

わかった。私が悪かった。
わかったから、ひとこと、前もって言ってくれないか。
私はどちらかと言うとストレートなので、前触れもなく路地裏に連れていかれそうになったり、とくに理由もなく抱きつかれたりしても、抵抗するに決まってる。
レズだから抵抗するわけじゃない。
相手が男でも、同じ状況下では抵抗する。
しかし相手が男の場合は、私のほうにもしかするともしかする可能性がある認識が予めあるので、隙を見せない態度を取るように努めている。
しかしレズはレズと言ってくれていなければ、女友達の態度で接しているので隙だらけである。銭湯に行けば当然一緒に風呂に入るし、同じ部屋で着替えもするさ、だって女同士なんだから。
そういうわけなんで、前もって言って欲しい。
そしたら隙を見せないようにするからさ。

３ヶ月ほど前からボランティアで一緒に活動している木島(仮名)さんに踊りを教えているんだけど、会うと必ず私をベタ褒めする人で、よくあるお世辞だと思っていたのだけど先週「本当に美人やわ～性格も明るくて～完璧やわ～」と言いながら木島さんがものすんごいチカラで私の腕を掴んできた。抵抗出来ないチカラで。二の腕をガッシリとホールドされて振り払うことが出来ない状態にして、木島さんは私の首・背中・腰・尻・太ももその他諸々をこれでもかと触ってきた。ボランティアの仲間たちはそれぞれに話しをしていたり、資料に目を通していたりして、私が置かれている状況にはお気付きでない。
さすが年の功、若輩レズにはないテクニック。

悪かった、私が悪かった。
踊りを教えてる時に手を握ったり腰を押さえたりしたのは、そういう目線じゃないんです、わかってください。
手をこの位置で止める、腰をちょっとだけ斜めに向ける、それを教えるために触ったんです。
以後、気を付けます。
こうゆうことになるからさ、前もって言ってくれんかのぅ。

でももし前もって言ったら抵抗されると踏んであえて言ってないんだとしたら、レズ、むちゃ頭キレるやん。その計算高さを見習いたいな。