前回は、出入り自由の留置所のお話をしましたが、今回は裁判と刑務所のお話です。
南の島の、わが町から二つ先に、地方裁判所と刑務所があります。

以前、民事を抱えていた亀吉は、弁護士と一緒に公判に出席していました。
５０人も入ればいっぱいの裁判室で、次々と審議が行われます。
弁護士たちは、民族衣装のバロンタガログで、正装をしています。
一緒くたに、審議が行われるので、他人の事件なんてバレてしまいます。

私もやりました。あの、聖書に手を当てて「真実を証言します」ってのを。
こっちの裁判は、やり取りは地元語と公用語ですが、公的文書は英語で作られます。
英語の苦手な亀吉は、公用語の通訳を入れてもらって証言をしました。緊張しました。

で、ですね！！　こちらでは民事と刑事が、一緒に行われるのです。
傍聴席の後ろの一角に、５人位の容疑者が並んで座っています。
お揃いのオレンジのＴシャツを着て、手錠などの拘束はされていません。
ガードマンと、警官が一人、側に付いてるだけです。
傍聴に来た人が、「あんた何しでかしたの？」なんて、気軽に話しかけています。
初めは驚いて、怖かったものですが、慣れるもんですね。

民事が先に行われるので、実際に彼らの審議まで傍聴せずに帰ってしまいますが。
でも、刑務所がすぐ側にあるんですね。
高い塀じゃないんです。金網！！　金網だけなんです。目の粗い。。。
それも、陸運局のすぐ後ろ。
免許証の書き換えや、車の登録更新などで、年に数回は、陸運局に出向くのですが、
服役者が金網から、陸運局に訪れる人々を眺めているんです。奴ら、暇だから。。。
で、知り合いがくると、タバコをねだるんです。
男友だちと行くと、彼は知り合いが金網の向こうにいると、タバコを１箱上げたりします。
私も、タバコを買ってあげたこともあります。でも、自分では金網に近づきません。

３月に日本に出稼ぎに行くから、陸運局に一人で相談に行った時のこと。
叫ぶんです、私に向かって、一人の受刑者が。。。
止めて・・・　あなた、昔確かにちょっと顔見知りだったかもしれないけれど・・・・
酔っ払って、棍棒で人を殺めた人でしょう。　
私の名前を叫ばないで。。。
今日は勘弁して。。。。　一人で来ているから。。。
次回、誰か男性と一緒の時はタバコ差し入れするから。。。
そう、心で叫んで、逃げて帰ってきました。